上 下
316 / 370
Scene11  シンデレラは時を越えて

  20

しおりを挟む
  信子は「えっ?」という顔をしますが、あらかじめエラから
聞かされていたせいか、黙ってうなづくと、
「ちょっと、ジュースを買いに行ってきます」
エラに近付いて行きました。
信子は少し緊張気味の顔をしています。
礼美も、何かを察したのか
「あとはまかせて」と言うと、大きくうなづきました。
2人が連れ立って、歩いて行こうとすると、
「時間がないから、すぐに戻ってね」
メグミさんが、声をかけてきました。
それには「わかった」と言うと、足早にその場を離れます。

 この後の予定だと、信子は一応裏方なので、舞台袖でスタンバイの
予定です。
でもエラは出番があるので、すぐに戻らないといけません。
出番まで、あと少し…
うまく終わればいいな、と思います。
それに信子には、この後、大切な用事が待っているのです。
何一つ、もれがないようにしなければ…
さすがのエラも、少し緊張してきました。

 エラと信子が向かったのは、ホールのロビーの反対側にある
小さな公園でした。
そこの入り口から少し入ったところに、花時計があります。
その側で、小さな姿が所在なさげに、たたずんでいます。
その小さな姿を見かけると、思わず信子は、こらえきれなく
なり、駆け出しました。
その子供の側には、シューヘイが男の子を支えるようにして、
立っています。
「ジュンヤ!」
その男の子に向かって、信子はこれまで聞いたことのないくらい、
大きな声をあげて、走り出します。
ジュンヤと呼ばれた男の子も、声のする方を探し、信子を認めると、
「姉ちゃん!」と言って、信子めがけて、ころびそうな勢いで、
走り出しました。


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

幼馴染みに殺される!?

設楽 件
ライト文芸
 僕は二十歳で、親が決めた相手と結婚させられた。  結婚相手は幼馴染み。仲悪いが、結婚しないと親から勘当!?  周囲には仲良し夫婦を演じて、心の底では、いつかお互いに殺そうと考えている  今、独特な新婚生活が始まる!  一話300文字台です。サクサク読める作品になっていると思います。

三年で人ができること

桃青
ライト文芸
もし三年後に死ぬとしたら。占いで自分にもう三年しか生きられないと告げられた男は、死を感じながら、平凡な日常を行き尽くそうとする。壮大でもなく、特別でもなく、ささやかに生きることを、残された時間で模索する、ささやかな話です。

言の葉縛り

紀乃鈴
ライト文芸
 言葉を失った「ぼく」と幼馴染の遥。 小学六年生の二人はいつも通り千代崎賢人――通称おじさんの家で遊んだ後、帰路に就く。 そこで二人は少女が誘拐される現場を目撃する。 報告するも大人たちの頼りにならない対応に、二人は自分たちでこの事件を追いかけようと決心する。

猫縁日和

景綱
ライト文芸
 猫を介していろんな人たちと繋がるほっこりストーリー。 (*改稿版)  はじまりは777の数字。  小城梨花。二十五歳独身、ちょっとめんどくさがり屋のダメな女子。  仕事を辞めて数か月。  このままだと、家賃も光熱費も食費もままならない状況に陥ってしまうと、気が焦り仕事を探そうと思い始めた。  梨花は、状況打破しようと動き始めようとする。  そんなとき、一匹のサバトラ猫が現れて後を追う。行き着く先は、老夫婦の経営する花屋だった。  猫のおかげというべきか、その花屋で働くことに。しかも、その老夫婦は梨花の住むアパートの大家でもあった。そんな偶然ってあるのだろうか。梨花は感謝しつつも、花屋で頑張ることにする。  お金のためなら、いや、好きな人のためなら、いやいや、そうじゃない。  信頼してくれる老婦人のためなら仕事も頑張れる。その花屋で出会った素敵な男性のことも気にかかり妄想もしてしまう。  恋の予感?  それは勝手な思い込み?  もしかして、運気上昇している?  不思議な縁ってあるものだ。  梨花は、そこでいろんな人と出会い成長していく。

アナスタシアお姉様にシンデレラの役を譲って王子様と幸せになっていただくつもりでしたのに、なぜかうまくいきませんわ。どうしてですの?

奏音 美都
恋愛
絵本を開くたびに始まる、女の子が憧れるシンデレラの物語。 ある日、アナスタシアお姉様がおっしゃいました。 「私だって一度はシンデレラになって、王子様と結婚してみたーい!!」 「あら、それでしたらお譲りいたしますわ。どうぞ、王子様とご結婚なさって幸せになられてください、お姉様。  わたくし、いちど『悪役令嬢』というものに、なってみたかったんですの」 取引が成立し、お姉様はシンデレラに。わたくしは、憧れだった悪役令嬢である意地悪なお姉様になったんですけれど…… なぜか、うまくいきませんわ。どうしてですの?

おにぎりが結ぶもの ~ポジティブ店主とネガティブ娘~

花梨
ライト文芸
ある日突然、夫と離婚してでもおにぎり屋を開業すると言い出した母の朋子。娘の由加も付き合わされて、しぶしぶおにぎり屋「結」をオープンすることに。思いのほか繁盛したおにぎり屋さんには、ワケありのお客さんが来店したり、人生を考えるきっかけになったり……。おいしいおにぎりと底抜けに明るい店主が、お客さんと人生に悩むネガティブ娘を素敵な未来へ導きます。

2・5次元に恋するのは浮気ですか?

さつきのいろどり
恋愛
私は、もうそろそろアラフォーを迎える主婦。 来年、中学生になる子供と、小学生の子供が二人いる。 主人との仲も良好です! そんな私は恋をしてしまう。恋愛アプリゲームの中の相手に。 笑ってしまう人もいると思うけど、その恋愛アプリゲームは だだのアプリではなかった。二・五次元と言う、リアル体験型のアプリ。 そのゲームの中の登場人物に恋をしたら浮気になりますか?

REMAKE~わたしはマンガの神様~

櫃間 武士
ライト文芸
昭和29年(1954年)4月24日土曜の昼下がり。 神戸の異人館通りに住む高校生、手塚雅人の前に金髪の美少女が現れた。 と、その美少女はいきなり泣きながら雅人に抱きついてきた。 「おじいちゃん、会いたかったよ!助けてぇ!!」 彼女は平成29年(2017年)から突然タイムスリップしてきた未来の孫娘、ハルミだったのだ。 こうして雅人はハルミを救うため、60年に渡ってマンガとアニメの業界で生きてゆくことになる。 すべてはハルミを”漫画の神様”にするために!

処理中です...