ちょっと待ってよ、シンデレラ

Scene11 シンデレラは時を越えて

１６

「なになに、なぁに？
　まさか、家出でもするの？
　それとも、家出の手伝いをしてくとか、
　そういうのじゃないでしょうね？」
　礼美がエラの顔をのぞきこんで、笑いながら言うので…
エラは即答出来ずに、一瞬間があきました。
すると真面目な顔つきで、
「うーん、そんなようなものかなぁ」と言うと、
軽いつもりで言ったせいか、
「えぇっ？」
予想外に、大きな反応を見せて、引っ繰り返らんばかりに、
声を上ずらせるので、エラはあわてて、
「あっ、しぃ～！」
　礼美の服の袖を、引っ張ります。
さすがに破れたりはしませんでしたが、それでフッとして
我に返ったのか…
「ごめん　　ごめん」と声を潜めると
「ちょっと、外へ出ようか」
エラの手を、引っ張って、控室から出て行こうとしました。
手を引っ張られるエラ…少し驚いて、
「えっ？大丈夫なんですか」
とまどいますが…
「だって、２人きりじゃないと、ダメでしょ？」
真面目な顔で、礼美が言うので、確かにそうだと気付くと
「はい」とうなづいて、礼美の言う通り、ドアへと向かいました。

「どこへ行くの？」
そんな２人を見とがめて、メグミさんが声をかけます。
「ちょっと…」
礼美が返すと、
「忘れ物？早く戻ってきなさいね」
疑うことなく、メグミさんはうなづきます。
チラリと振り向くと、他のメンバーは特に不審がることもなく、
スマホをいじったり、気付く様子もありませんでした。