ちょっと待ってよ、シンデレラ

Scene11 シンデレラは時を越えて

１５

　　どうやらエラが、何事か企んでいるらしい…
そのことは、もちろん礼美も気付いていました。
それでも礼美は、エラのことを信じていたので、あえて何も
聞きませんでした。
もしも何か自分ができることがあるのなら…
おそらくエラの方から、頼んでくるだろう…と、頼ってきてくれる
ことを、期待していたのです。

　案の定、ロビーに入って来た時に、礼美はこっそりと、エラの様子を
うかがっておりました。
だけど、やはりなんとなく、落ち着きのないように見受けられました。
さらに、やたらと時計を気にしているように、見えました。
それなので、礼美はエラに近付いて、
「どうしたの？緊張しているの？」と聞くと、
それまで礼美の存在に気付かなかったのか、あるいは何やら心配事を
かかえていたのか…
ひどく驚いた顔をしてみせました。
それから礼美の顔色をうかがい、
「別に、何も…」と言いつつも、こそっとひと言、
「実は、礼美さんに、お願いがあるのですが…」
と、切り出しました。
真剣な面持ちで、エラがじぃっと礼美の顔を見つめるので、

礼美は「なぁに？」とまっすぐ見つめ返しました。
実は、シューヘイにも大事なことを頼みましたが、
礼美の役割も重要です。
エラは唇を軽く湿らせると
「あのね、みんなにナイショにしておいて欲しいことがあるのよ」
と言うと、ちらりと辺りを見回しました。