ちょっと待ってよ、シンデレラ

daisysacky

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Scene11  シンデレラは時を越えて

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「私、知ってるのよ…大家さんから聞いたわ。
 あなた、家に帰るんですってね」
 静かな声で、カスミが言うので、エラはひどく驚いて、
なんと答えたらいいのか、わからなくなってしまいます。
思わず、手に持っていたコップを、下に落としてしまいました。
「あっ、大丈夫?」
ころころ転がるマグカップを追いかけると、笑いながらカスミは
しゃがみ込むと…そっとカップに手を触れました。
「大丈夫」
カスミはにっこりして、そのカップをエラに返しました。

 幸いカップはからだったので、ほんの数滴、茶色いシミが、
ラグの上に、点々と、つきました。
エラがあわてて立ち上がると、もう1度
「いいの、いいの、大丈夫」と言うと、カスミは台拭きを取りに
立ちあがります。
「あなたが、どこのだれだか、知らないし
 どこへ行くのかも、知らない…
 でも覚えていて、きっと家に帰ってからも、
 私は、あなたのことを忘れないし、
 もしも帰ってきたかったのなら、いつでもここに…
 帰ってきても、いいからね!」
そう言うと…エラの頬をやさしく撫でました。

 カスミの優しい言葉に…エラの口の中が、涙で
しょっぱくなってしまいました。
「ここはあなたの家だし、いつでもあなたのこと…
 待ってるからね」


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