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Scene11  シンデレラは時を越えて

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  カスミは自分のことを、どう思っているのだろう…
エラにはわかりません。
思いがけず、カスミに褒められて、照れるエラです。
エラはどう打ち明けようか、と思案していると…
カスミがふいにエラの方を向くと、
「もうすぐ…お別れなのね」
いきなりエラに向けて言うので…ひどく驚きました。
カスミが今どんな顔をしているのか、確かめてみたい…と思うのですが、
カスミがクルリンと、背中を向けるので、表情を読み取ることは、
できません。

  エラは一瞬、魔法使いとの話を、カスミにも知られたのかと、
疑いました。
カスミの方をうかがいますが、こちらに背中を向けたままです。
「あなたが何を考えているのかは、私にはわからないけど…
 それが正しいと思うのなら、自分のしたいように、しなさいね」
それだけ言うと…カーテンを閉めました。
さらにエラは、シューヘイから話を聞いたのか、とも思いましたが、
そんな様子もないので、シューヘイを疑うのは、ナシにしました。
カスミに何と言ったらいいのかわからなくて、グズグズしているうちに、
いつの間にか夜もふけて、すっかり遅くなりました。

「私はね…あなたと一緒に暮らしていて、楽しかったわよ」
相変わらず背中をむけたまま、カスミは言います。
まるでエラの心を読むように、さり気なく…
「あなたと一緒に、人形劇を見に行ったり、一緒にご飯を食べたり…
 まるで毎日が、合宿か、修学旅行みたいで、とっても楽しかったわ」
そう言うと、ようやくカスミはエラの方を、振り向きました。
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