ちょっと待ってよ、シンデレラ

Scene10 シンデレラを取り戻せ！

１９

　　それでも大家さんは、ニコニコと笑顔を浮かべたまま、
「私、中は見てないわよ。感じたことを、言っただけ」
と言うので、そうなのか…と、まるで、狐につままれた思いでした。
「信子ちゃんのことは、まかせて！
　ちゃんと、次の手も考えてあるから」
そうきっぱりと言われると…なぜだか、それは間違いのないこととして、
安心するのです。

それよりも…とエラは思います。
困ったことになったわ…と。
それは手紙に書いてある日と、人形劇の上演の日が、
同じだったからです。
さすがに、時間まではかぶらなかったけれど…
その不思議な一致に、ますますエラは、何事かを感じるのです。
もしかしたら、本当に、このチャンスを逃してはいけないのかも
しれない…そう思うと、自然と顔が引き締まります。
そして、これから自分がしようとしていることは、正しいのか
どうか…
あらためて、自分に問いかけるのでした。


　やはり自分一人で抱えているのは、よくないことなのかも
しれない…と、エラは（どこまで信じてくれているかは、別として）
礼美にだけは、少しばかり、話しておくことにしました。
以前に、自分は遠い世界から来た…と言っていたので、
カスミよりは、受け入れやすいかも…と思ったのです。
それに、いきなり姿を消すのは、よくないことなのかもしれない…
そういう思いもありました。
なので、２人きりになる時を見計らって、
「実は…」と切り出すと、礼美は
「なぁに？」とまっさらな顔を、向けてきました。