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scene 9 もう1つののシンデレラ物語

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  そうは言われたけれど、エラはベランダに出ると、洗濯物を取り込みます。
すっかり冷えてしまった洗濯物を、手早く部屋に入れると…
本来なら食事の支度も、居候の身の上のエラの仕事でしたが…
今日はカスミの好意に甘えることにしました。
急いで着替えをしに、奥の部屋に入る時…
一瞬、カバンの中の手紙のことが、頭をよぎりましたが…
後でいいかと思い直し、そのままにして、クローゼットの中に
しまい込みました。

 ようやく手紙を開いたのは…夕食後、カスミがお風呂に入っている時でした。
エラの居室にしている、4畳半の小さな部屋で、フスマをぴっちりと閉めて、
ベッド代わりにしている、マットレスに腰を下ろしました。
 何が一体、書いてあるのだろう?
何だかとても、ドキドキします。
こんな思いは、ついぞしたことがないのかもしれません。
それよりも…なんで大家さんに、預けていたのか、が気になります。
魔法使いのおばあさんは…あの大家さんと、知り合いなのだろうか?
それとも、なにか秘密裏につながっているとか?
あれこれ考えますが、いつまたカスミが出て来るのか、わからないので
ひとまずそれは、棚置きにして、封筒の中身を取り出しました。

 それはどこか、懐かしいニオイのする便せんでした。
おそらく近くの野原から、取って来たハーブでニオイをつけたのでしょう。
エラはこの時初めて…元居た自分の家が恋しくなりました。
さすがに、継母には、会いたいとは思いませんが…
なぜだか、便せんを開くのを、ためらいます。
内容がなんとなく、想像できるからです。
でも…と思って、エラは勇気を振り絞ります。
そこには…流れるような、美しい文字がキッチリと、記されていました。


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