ちょっと待ってよ、シンデレラ

Scene ８ シンデレラは眠れない

３３

「私…もしかして、無神経だったね。辛いこと、思い出させて、
ごめん！」
　もともと、優しい人なのでしょう…
ひどく顔をクシャクシャにして、メグミさんは申し訳なさそうな
顔をしました。
そんな風にして、優しくしてもらったことのないエラは、
それ以上余計なことを言えずに、
「あ…えぇ、そんなことないです」
口の中で、モゴモゴ言いました。

（まさか、自分がおとぎの国から、タイムスリップしてきた、
なんて言えないよ）
そう思います。
本当なら、思い切って打ち明けて、相談に乗ってもらいたいのですが、
あまりに荒唐無稽すぎて、逆に心配されそうで。
（別の病気と思われそうで）
実は、シンデレラの人形劇をしたい、と提案した時に、
いっそのこと、ホントのこと、打ち明けてしまえ！と思ったのです。
だけど…カスミでさえ、信じてくれそうにないので、
この人たちに、話せるわけない、とあきらめているのです。
一体、いつ、ホントのことが、話せるのだろう…
そう思う、エラなのでしたが…
それでもまだ、この優しい人たちを、困らせたくなくて、
打ち明けられないエラです。

「早く、思い出せたらいいね」
その時ふと、中学生の信子が口を開きました。