ちょっと待ってよ、シンデレラ

Scene ８ シンデレラは眠れない

１５

　　とはいうものの、エラはまだ、この世界の初心者で、働いたこともないのです。
ま、もっとも…おとぎの国では、下働きのようなことを、していましたが…
少し不安ですが、大家さんの
「やるだけ、やってみれば？」という言葉に、不安ではあるけれど、
少し勇気をもらいました。
いきなり、接客業などと、ハードルは高くはないか、
脅迫めいたメールなどが来ていないか…心配になりました。
考え出すと、不安な気持ちは、増殖していくのです。

帰ったら、早速カスミに報告せねば…そう思ったのです。
そんなエラの気持ちは、とうの昔に、見透かしていたのか…
全く動じることなく、むしろ堂々として…エラに向けて
微笑んでいます。
「大丈夫よ！少々の失敗は、みんながフォローしてくれるわ！」
大家さんは、穏やかに微笑みます。
「失敗を恐れては、ダメよ。
　一歩も、前に進めなく、なってしまうわ！」
そう言うと…励ますように、エラを見つめます。
何か意味ありげに、笑うので…どうしたのかと、その言葉の意味を、
考えるのです。大家さんが、意味ありげに、うなづきました。
エラはただ…
「そうですね」としか言えないのです。
この世界は、おとぎの国と違って、やたらとみんな、せかせかとして、
働いている、少しも気をゆるめるな」と、言うのです・・・
それには、エラも大いに不満ですが…
それにしても…
と、エラは思います。
（魔法使いのおばあさん、一体どうしているのでしょうか？）
思わずため息を漏らすと…
先ほどから大家さんは、目の奥をのぞき込むようにして、
エラのことを、見つめていました。