ちょっと待ってよ、シンデレラ

Scene ８ シンデレラは眠れない

１３

　大家さんは、いつもとは違う雰囲気で…エラは
圧倒されます。
「初めは見習いで、フロアに出てもらいます」
エラの様子にはおかまいなしに、テキパキと話しています。
カスミと話してるときには、年金と、おじいさんの残してくれた土地のお陰で、悠々自適な老後を送っていると、思い込んでいただけに、ちょっぴりショックです。
何も言えないまま、まるで悪夢を見ているような…
不思議な気持ちに、襲われています。

　それでも、自分がこの世界で、自立するためには、
必要なことなんだ…と、自分に言い聞かせるような
気分です。
「仕事自体は、そんなに難しいことではないわ。
　注文を聞いて、運ぶだけ。
　初めは大変だろうけど、慣れるとそうでもないわよ」
そう、何てことのない顔で、エラに話しかけます。

　人は見かけに騙されるな…
というけれど、今回は大家さんの、服装にかまわぬ
姿に、すっかり騙された形になりました。
エラはまだ、なんのこっちゃ、と理解出来ていないけど、大家さんの様子は、まったく崩れるようではなくて、全くの平常と変わらぬ様子で、
「あなた、飲食業、経験はないの？」
ひどくあっさりと、聞かれました。