ちょっと待ってよ、シンデレラ

Scene ８ シンデレラは眠れない

１２

　大家さんが、まさかそんな土地持ちだとは知らなかったので、エラはまたしても驚いてしまいます。
いつも地味な服装で、むしろファッションに、びた
1文使うのは、もったいない、という考え方の持ち主です。
ここにもしも、カスミがいたのなら、
「なに？大家さんって、すごーい！
　お金持ちだったのね！」などと、大騒ぎをしていたことでしょう…

　エラもこの世界に来て…少しは慣れて来たので、
オトギの世界のような、ちょっとご飯を食べさせる
飲み屋さんや、いわゆる飯屋さんとは、ちがう、と
言っているのは、理解していました。
だけど、ふらっと入ったお店の光景に、思わずエラは
足を止めます。
おそろいのエプロン。
おそろいの制服…
みんな同じような顔をして、同じようなメイクを
しています。
すると、この世界には、ナントきれいなところがあるのだろう…
目を見張って、ポカーンとしているエラに、大家さんは、いつもの掃除をしている姿からは、想像できない
別のマジメな顏で、背筋をシャンと伸ばします。
　なんだかそれが本当の姿のようで…エラは少し
だまされたような気分になりました。