ちょっと待ってよ、シンデレラ

scene 5 それは、魔女の館？

７

　いきなり声が降ってきたので、エラはビクリとして、身を縮めて顏を上げます。
そこにいたのは、見覚えのある顔で、一瞬エラは
時が巻き戻ったのかと、錯覚に陥りました。
捨てられた子猫のように、身を丸めて座り込んでいる
エラに・・・
「なにやってるの？そんなとこで」
　幾分、陽気な声で、声の主は手を伸ばします。
「なにって、別に・・・」
その腕に助け起こされるようにして、立ち上がると、
少し取り繕ったように、エラは顔を上げました。
「別にって・・・こんなとこでしゃがみ込んで・・・
　気分でも、悪いの？」
　ほんのりと顏を赤くしたシュウヘイは、いつものように優しい声で言います。
エラは頭を振り、
「そんなこと・・・」と」口ごもると、
「シュウヘイこそ、どうしてここに？」
　偶然とはいえ、タイミングよく通りかかったシュウヘイに、驚いて聞きました。
「ちょっと、その辺で飲んできたんだ～」
と、目をクルクルさせて言うと、
「お嬢さん、酔っ払いにからまれるから、気をつけなさいよ～」
　酒臭い息を吐きかけて、ふざけたように言うので・・・やはりいつものシュウヘイとは、少し違うな・・・と、エラはスカートを払うようにします。

「ねぇ、私と最初に会ったのは、ここよね？」
確かめるようにして聞くと、果たしてシュウヘイは
「えっ？」と言うと、あらためて周りを見回して、
「そうだよ」と、不思議そうな顔をして、答えました。