ちょっと待ってよ、シンデレラ

Scene 4 合い言葉はビビデバビデブー

３

　この日も、エラはせっせと家をピカピカに磨きたてていました。
玄関のホコリもすっかりふき取り、ベランダも掃き清め、窓ガラスも鳥が激突しそうなくらい、ピカピカに
磨いていました。
すると背後に、人の気配がして、エラは一瞬、
（あら？鍵をかけ忘れたのかしら？）と思いました。

　何しろ、エラは鍵なるものも、よく知りません。
お父さんと一緒に暮らした家には、鍵はもちろん
あったのでしょうが、大概、使用人が管理していました。
さらに今のような、鉄の扉ではないので、あんな華奢なフォルムの金属のかたまりなど、無縁の存在でした。
鍵をかける・・・という行為自体、したことがなかったので・・・
（せいぜい、カンヌキをかけるくらい）
だから、カスミに直接渡された時には、戸惑って
「これ、なんですか？アクセサリーですか？」
と聞いて、呆れられたのでした。
カスミ、かなりの動揺ぶりで、
「それ、本気で言ってるの？」
いきなり、あきれられました。
「あなた・・・天然なのか、バカがつくほどの常識
　外れなのか・・・どっちかよね？」
と言いつつも、
「いや、両方かぁ～」と言って、豪快に、笑います。
さらに「飽きないわぁ」とつぶやくとエラをチラリ・・・と見るのでした。
　
エラには、何がおかしいのか、わかりません。
憮然とした表情で、
「だって。見たことないんですもん」
と言うと、カスミのツボにはいったらしく、マスマス
ケラケラ笑うのでした。