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祭りの前夜
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しおりを挟む「実はねぇ、スペアキー、持ってるんだ!」
いたずらっぽい目つきで、カナエはスカートのポケットに、
手を突っ込む。
「お前たち~、早く帰れよ!」
進路指導の田丸先生が、ナギコたちに声をかける。
ナギコはすかさず振り向くと
「教室に、カナエが忘れ物をしたから、取りに行ってきます!」
堂々と言う。
先生はキュッと眉をしかめると、
「いいけど…早くしないと、教室にカギをかけるからな!」
セカセカとした口調で、声をかけると、先生は2人の前から
走り去った。
「ちょっとぉ、なんで私?」
ダシに使われたのが、引っ掛かるのだ。
「しっ、聞こえる」
ナギコは後ろを振り返る。
「先生…何だか忙しそうね」
「文化祭だからよ!
明日は、よその高校からも人が来るから、先生たちも
ピリピリしているのよ」
お願いだから、刺激しないで…
ひそかにカナエは、そう思うのだ。
ここ夢町高校は、女子部と男子部に分かれる、珍しい学校だ。
もちろん普段は行き来がないのだが、
この時ばかりは、無礼講ということで、男子学生も学校に
入って来ることが出来るのだ。
さらにその現象に、拍車をかけているのが…
女子部には、可愛い子が多い…という評判だ。
もちろん他校の生徒たちも、この機会を狙っているという。
実際に、文化祭で知り合って、カップルになる人たちが、
何組も出ている。
校門の外で待ち合わせして、ちゃっかりデートをする姿が、
チラホラと見かけられるので…
先生たちの目も、自然と厳しいものになってくるのだ。
「今年も、誰かくっつくのかなぁ」
ニヤニヤしながら、ナギコは完全に楽しんでいる。
「さぁ?」
さして興味なさそうな顔で、カナエは教室に向かって歩いて行く。
「ふぅーん、そう?」
ニヤリとナギコは、カナエの横顔を盗み見る。
ナギコは知っているのだ…カナエのヒミツを。
「そうそう、あのお店!行った?」
屋上へと向かう階段を上りながら、ナギコはカナエの背中に向かって、
声を張り上げる。
「あっ、行ってきたよ」
そうだった、とカナエは思い出す。
「どうだった?」
「あっ、コーヒー、出たよ」
あの女の子、お人形さんみたいに、可愛かったなぁ~
思わずカナエは微笑む。
ちょっぴり風変りのお店と、恥ずかしがり屋の女の子。
ごくごく普通のコーヒーなのに、なぜか心がホッコリとするような、
暖かいコーヒーの香り。
「そうかぁ~よかったねぇ」
ニコニコしながら、カナエを見ると、
「ありがと」
カナエはナギコを見つめた。
「いいよぉ、別に!
それで…スッキリした?」
「うん!」
コンクリートの石段を、肩を並べて上がって行くと、突き当りに
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