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第18章  さようなら、桜ハウス

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「なんだか、いいなぁ~」
 部屋が片付くと早々に、母さんが帰って行き、杏子と2人きりになった。
待子は壁にもたれかかり、ボンヤリと友の顔を見る。
「えっ、何が?」

 夕焼けに染まる新しい部屋は、壁がすこし日焼けしていたけれど…
まだ清潔な畳のにおいがした。
夕日が小さな窓から差し込むと、部屋全体が茜色に染まる。
持ってきた荷物は、あらかた収まるところに収まり、
たたんだ段ボールが、ヒモで縛られて、玄関わきに、積み重ねられていた。

「段ボール、また後で、出しておくね」
 杏子が振り返りながら言うと、
「ありがと」と短くうなづく。
「なんか…あっという間だったなぁ」
 夢中で駆け抜けた1週間。
ガムシャラに突き進んだなぁと、待子は思い返す。
佐伯さんのストーカー騒ぎで始まって、
ボヤ騒ぎ、引っ越し…と、一気にトラブルが重なり、
バタバタと、目まぐるしく環境が変わったなぁと、しみじみ思う。

「優しそうな人ね」
コソッと杏子の顔を見つめて、ささやくと
「そう、とっても優しいの」
チラと玄関の方を振り向く。
「やだぁ、のろけてる!」
「あら、羨ましかったら、紹介しようか?」
じゃれあうように、待子と杏子は突っつきあい、クスクスと笑う。
その間も…男性陣はかいがいしく、皿を包む新聞をたたんだり、
段ボールをつぶしたりしている。
「案外、荷物…少ないのねぇ~」
感心したように、杏子が言うと
「私なんて…この10倍はありそう」
真面目な顔をして、杏子は待子を振り向いた。
杏子が言うと、とても冗談には思えない。
「そう?これでも荷物…増えたのよ」
新しい部屋をグルリと見回すと、満足したように、
ニコニコとした。
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