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第15章 いのち短し 恋せよ乙女?
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男が去った後…待子は力が抜けて、その場にしゃがみ込んだ。
あとは少し時間をおいて、佐伯さんとの待ち合わせの場所へ
向かうだけだが…
うまく逃げ切れたかどうかは、定かではないので、少し
気になる待子なのである。
男が向かった方向は、おそらく信号をまっすぐ行ったところのはずだ。
たぶん大丈夫だろうとは思うけれど…急に足がガタガタと震えた。
あの男は、一体何者で、どこの人で、佐伯さんとはどういう関係なのか?
気になることは、たくさんあるけれど…ようやく縁石に手をかけると、
震える足をどうにか踏ん張って、立ち上がろうとした。
たまたまこの時、人通りがなかったので…このやり取りは、誰にも
見られなかったけれども。
自分にも、こんな勇気があったのだ…と、思うだけで腰が抜けそうなくらい、
驚きもした。
ようやくその場を離れると、1台の車が通り過ぎた。
大丈夫、きっとうまくいく!
そう信じて、ゆっくりとよろける体を支えながら、目的地へと向かった。
何とか態勢を取り戻すと、自分を励ましながら、佐伯さんの待つ公園へと
向かった。
信号を曲がり、住宅街を抜けると、先ほどの喧騒は嘘のようで、
待子もやっと安心して、普通の足取りで進んで行く…
一歩路地に入ると、のどかな空気が漂い、どこかで子供の声が
聞えてくる…
もしもあの男が通ったのならば、おそらく異質な空気で目立っているだろうから、
たぶんこの辺りまでは、入り込んでいないだろう…
そう待子は踏んでいた。
電信柱を通り過ぎ、車止めを抜けると…
ようやく小さな公園の入り口へとたどり着く。
パッと見通しのよい空間には、ベビーカーを押した、若い母親の姿が
チラリと見えていた。
あとは少し時間をおいて、佐伯さんとの待ち合わせの場所へ
向かうだけだが…
うまく逃げ切れたかどうかは、定かではないので、少し
気になる待子なのである。
男が向かった方向は、おそらく信号をまっすぐ行ったところのはずだ。
たぶん大丈夫だろうとは思うけれど…急に足がガタガタと震えた。
あの男は、一体何者で、どこの人で、佐伯さんとはどういう関係なのか?
気になることは、たくさんあるけれど…ようやく縁石に手をかけると、
震える足をどうにか踏ん張って、立ち上がろうとした。
たまたまこの時、人通りがなかったので…このやり取りは、誰にも
見られなかったけれども。
自分にも、こんな勇気があったのだ…と、思うだけで腰が抜けそうなくらい、
驚きもした。
ようやくその場を離れると、1台の車が通り過ぎた。
大丈夫、きっとうまくいく!
そう信じて、ゆっくりとよろける体を支えながら、目的地へと向かった。
何とか態勢を取り戻すと、自分を励ましながら、佐伯さんの待つ公園へと
向かった。
信号を曲がり、住宅街を抜けると、先ほどの喧騒は嘘のようで、
待子もやっと安心して、普通の足取りで進んで行く…
一歩路地に入ると、のどかな空気が漂い、どこかで子供の声が
聞えてくる…
もしもあの男が通ったのならば、おそらく異質な空気で目立っているだろうから、
たぶんこの辺りまでは、入り込んでいないだろう…
そう待子は踏んでいた。
電信柱を通り過ぎ、車止めを抜けると…
ようやく小さな公園の入り口へとたどり着く。
パッと見通しのよい空間には、ベビーカーを押した、若い母親の姿が
チラリと見えていた。
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