上 下
303 / 428
第13章  桜ハウスを守れ!

   11

しおりを挟む
「オバサン、やっぱり少しは気を付けなくちゃあ。
 無理したら、それこそ、ここを閉めなくちゃ いけなくなるわよ」
 サラさんが大家さんに向かって、たしなめるように言う。
それからじぃっと見つめる、待子と佐伯さんの視線を感じて、
「私ね、オバサンのお目付け役もしてるのよ」と言うと、ニッコリとした。

「そうなの!」
 突然大家さんが、大きな声でうなづくと、
「この人のおかげで、中々1人で自由に、気ままにできないからねぇ」
 ニヤッと笑ってそう言う。
だけど、少しも嫌そうには感じられない。
この2人、仲がいいんだなぁ~と、サラさんと大家さんが顔を見合わせて
ニッコリするのを見ると…なぜだか心がホンワカと暖まるような気がした。
それなので、なぜサラさんが、わざわざオバサンの家にいるのか、
待子にもわかるような気がしてきた。
それよりも何よりも…大家さんが元気そうなのが、ホッと一安心。
だけど半年後と、期限を区切られたことについては、思うたびに
気がめいってくる。
「どうしよう…」
思わずつぶやくと、
「大丈夫?」
サラさんが、顔をのぞき込んできた。
「大丈夫…」
肩を落として、スゴスゴと部屋に戻ろうとすると…サラさんに呼び止められた。
「ごめん、ごめんねぇ~」
さらに声をかけられる。
待子はクルリと振り返ると、
「いいえ」と頭を振り、サラさんの方を向いた。
「うちのお父さんねぇ~あぁ見えて、結構心配性なのよ」
いつの間にか待子のすぐ後ろに来て、サラさんが立っている。
「そうなんですか?」
何と返事を返したらいいのか、待子はちょっと困った顔をした。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

鉄路を辿って ~回送列車編④~ (鉄道の直通運転とお守りの力によって結ばれた私たちの、2021年最後の高校生活)

まずる製作所
ライト文芸
*このお話は~直通運転編③~の続きとなっております。よろしければ、~直通運転編③~の方もご覧ください。  二〇二一年、神奈川県の閑静な住宅街に住む高校三年生の西谷百合絵は、今年大学受験を控えていた。お騒がせなウイルスの影響や伸び悩む成績のこともあり、彼女はまた大変な高校生活を送っていた。二年生の頃から付き合い始めた新しいパートナー――的場萌花とも三年一学期の途中で別れてしまい、彼女にはもう受験勉強と大学受験いう目の前のつらい現実しか残っていなかった。  二学期が始まって数日後、幼馴染でクラスメイト――寒川琴乃の違和感に気づいた。気になって仕方がなかった百合絵は出来心により琴乃の荷物を勝手にあさってしまいそれが仇となり唯一無二の気が置けないクラスメイト、そして友達を失ってしまった。  もはやこのクラスに一緒に居てくれる人は誰もいない。つらく思い悩んでいた百合絵はとうとう鉄道ヲタクの秦野宏明と昼休みを共にしてしまう。幸い秦野は百合絵の他クラスの友達――神宮真妃の彼氏ということもあり観察対象という意味でちょうどよかった。しかし、百合絵には腑に落ちないことがあった。 「どうして何も共通点のない秦野と真妃ちゃんがこんなにもラブラブなの?」  ある日、一年生の頃のクラスメイト――舟渡啓介との偶然の再開によりなんとか琴乃と仲直りするきっかけをつかんだ百合絵だったが、琴乃は「舟渡が受験する慶應か早稲田に合格しなければ来年四月から絶交する」という無茶苦茶な条件を突き出してくるのだった。 「琴姉のバカッ! できっこない条件つけてくるなんて……。ほんと、最低っ!」  とある私鉄沿線に住む高校三年生の女子高生の日常を描いたお話。彼女の大学受験の結末は? そして、秦野と真妃のカップルの秘密と、あのとき琴乃から感じた違和感の秘密とは? *こんな方におすすめいたします。  首都圏の鉄道に興味のある方  学生時代に受験勉強で大変な思いをされた方  現実世界の出来事をもとにした二次創作寄りの作品がお好きな方

続く三代の手仕事に込めた饅頭の味

しらかわからし
ライト文芸
二〇二二年八月六日の原爆の日が祖母の祥月命日で奇しくもこの日念願だった「心平饅頭」が完成した。 そして七十七年前(一九四五年)に広島に原爆が投下された日で、雲母坂 心平(きららざか しんぺい)十八歳の祖母はそれによって他界した。平和公園では毎年、慰霊祭が行われ、広島県市民の多くは、職場や学校でも原爆が投下された時間の八時十五分になると全員で黙とうをする。  三代続きの和菓子店である「桔平」は売上が低迷していて、三代目の店主の心平は店が倒産するのではないかと心配で眠れない毎日を過ごしていた。 両親を連れて初めて組合の旅行に行った先で、美味しい饅頭に出会う。 それからというもの寝ても覚めてもその饅頭の店の前で並ぶ行列と味が脳裏から離れず、一品で勝負できることに憧れを持ち、その味を追求し完成させる。 しかし根っからの職人故、販売方法がわからず、前途多難となる。それでも誠実な性格だった心平の周りに人が集まっていき、店に客が来るようになっていく。 「じいちゃんが拵えた“粒餡(つぶあん)”と、わしが編み出した“生地”を使い『旨うなれ! 旨うなれ!』と続く三代の手仕事に込めた饅頭の味をご賞味あれ」と心平。 この物語は以前に公開させて頂きましたが、改稿して再度公開させて頂きました。

メガネから見えるバグった世界 〜いいえ、それは仕様です〜

曖昧風味
ライト文芸
「凄いバグ技を見つけてしまった」  同じクラスだけどあまり付き合いのなかった無口なメガネくん。そんな彼が唐突にそう話しかけてきた時、僕は何故かそれを見てみたいと思ってしまったんだ。  目の前で実演される超能力じみた現象は一体なんなのか?  不思議な現象と、繰り返される記憶の喪失の謎を追う高校生達のとある青春の1ページ。

真実の愛に目覚めたら男になりました!

かじはら くまこ
ライト文芸
結婚式の日に美月は新郎に男と逃げられた。 飲まなきゃやってらんないわ! と行きつけの店で飲むところに声をかけてきたのはオカマの男だったが、、 最後はもちろんハッピーエンドです! 時々、中学生以下(含む)は読ませたくない内容ありです。

妹は欲しがりさん!

よもぎ
ライト文芸
なんでも欲しがる妹は誰からでもなんでも欲しがって、しまいにはとうとう姉の婚約者さえも欲しがって横取りしてしまいましたとさ。から始まる姉目線でのお話。

夏休みの夕闇~刑務所編~

苫都千珠(とまとちず)
ライト文芸
殺人を犯して死刑を待つ22歳の元大学生、灰谷ヤミ。 時空を超えて世界を救う、魔法使いの火置ユウ。 運命のいたずらによって「刑務所の独房」で出会った二人。 二人はお互いの人生について、思想について、死生観について会話をしながら少しずつ距離を縮めていく。 しかし刑務所を管理する「カミサマ」の存在が、二人の運命を思わぬ方向へと導いて……。 なぜヤミは殺人を犯したのか? なぜユウはこの独房にやってきたのか? 謎の刑務所を管理する「カミサマ」の思惑とは? 二人の長い長い夏休みが始まろうとしていた……。 <登場人物> 灰谷ヤミ(22) 死刑囚。夕闇色の髪、金色に見える瞳を持ち、長身で細身の体型。大学2年生のときに殺人を犯し、死刑を言い渡される。 「悲劇的な人生」の彼は、10歳のときからずっと自分だけの神様を信じて生きてきた。いつか神様の元で神様に愛されることが彼の夢。 物腰穏やかで素直、思慮深い性格だが、一つのものを信じ通す異常な執着心を垣間見せる。 好きなものは、海と空と猫と本。嫌いなものは、うわべだけの会話と考えなしに話す人。 火置ユウ(21) 黒くウエーブしたセミロングの髪、宇宙色の瞳、やや小柄な魔法使い。「時空の魔女」として異なる時空を行き来しながら、崩壊しそうな世界を直す仕事をしている。 11歳の時に時空の渦に巻き込まれて魔法使いになってからというもの、あらゆる世界を旅しながら魔法の腕を磨いてきた。 個人主義者でプライドが高い。感受性が高いところが強みでもあり、弱みでもある。 好きなものは、パンとチーズと魔法と見たことのない景色。嫌いなものは、全体主義と多数決。 カミサマ ヤミが囚われている刑務所を管理する謎の人物。 2メートルもあろうかというほどの長身に長い手足。ひょろっとした体型。顔は若く見えるが、髪もヒゲも真っ白。ヒゲは豊かで、いわゆる『神様っぽい』白づくめの装束に身を包む。 見ている人を不安にさせるアンバランスな出で立ち。 ※重複投稿作品です ※外部URLでも投稿しています。お好きな方で御覧ください。

タイは若いうちに行け

フロイライン
BL
修学旅行でタイを訪れた高校生の酒井翔太は、信じられないような災難に巻き込まれ、絶望の淵に叩き落とされる…

わけありのイケメン捜査官は英国名家の御曹司、潜入先のロンドンで絶縁していた家族が事件に

川喜多アンヌ
ミステリー
あのイケメンが捜査官? 話せば長~いわけありで。 もしあなたの同僚が、潜入捜査官だったら? こんな人がいるんです。 ホークは十四歳で家出した。名門の家も学校も捨てた。以来ずっと偽名で生きている。だから他人に化ける演技は超一流。証券会社に潜入するのは問題ない……のはずだったんだけど――。 なりきり過ぎる捜査官の、どっちが本業かわからない潜入捜査。怒涛のような業務と客に振り回されて、任務を遂行できるのか? そんな中、家族を巻き込む事件に遭遇し……。 リアルなオフィスのあるあるに笑ってください。 主人公は4話目から登場します。表紙は自作です。 主な登場人物 ホーク……米国歳入庁(IRS)特別捜査官である主人公の暗号名。今回潜入中の名前はアラン・キャンベル。恋人の前ではデイヴィッド・コリンズ。 トニー・リナルディ……米国歳入庁の主任特別捜査官。ホークの上司。 メイリード・コリンズ……ワシントンでホークが同棲する恋人。 カルロ・バルディーニ……米国歳入庁捜査局ロンドン支部のリーダー。ホークのロンドンでの上司。 アダム・グリーンバーグ……LB証券でのホークの同僚。欧州株式営業部。 イーサン、ライアン、ルパート、ジョルジオ……同。 パメラ……同。営業アシスタント。 レイチェル・ハリー……同。審査部次長。 エディ・ミケルソン……同。株式部COO。 ハル・タキガワ……同。人事部スタッフ。東京支店のリストラでロンドンに転勤中。 ジェイミー・トールマン……LB証券でのホークの上司。株式営業本部長。 トマシュ・レコフ……ロマネスク海運の社長。ホークの客。 アンドレ・ブルラク……ロマネスク海運の財務担当者。 マリー・ラクロワ……トマシュ・レコフの愛人。ホークの客。 マーク・スチュアート……資産運用会社『セブンオークス』の社長。ホークの叔父。 グレン・スチュアート……マークの息子。

処理中です...