桜ハウスへいらっしゃい!

daisysacky

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第11章  新しい仲間たち

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「おはよう!」
 駅の近くの駐輪場で待ち合わせをすると、杏子はすでに
人待ち顔で、待っていた。
「おはよう!今日はゆっくり出来るの?」
 のどかな顔で、待子に向かって、軽く手を上げると、
杏子はスタンドを倒して、こちらに近付いて来る。
「うん!今日はバイトがお休み」
「そう…じゃあまた、どこかへご飯を食べに行く?」
 待子はチラッと、冷蔵庫の中身を思い出すと、
「そうねぇ~たまにはいいかぁ」
もうすぐ初めてのバイト代が入る予定だ。
「杏子も、今日はバイトがないの?」
 杏子もまた、引っ越ししてすぐに、アパートの近くのコンビニで
募集に気付くと、さっさと決めてきたのだ。
どうやら学校帰りや、授業の合間に、シフトを入れているらしい。

「ねぇ…1年生のうちに、教習所へ行かない?」
ゆっくりと自転車を押しながら、杏子は待子を誘う。
「うーん、お金がねぇ」
行きたいのは山々だけれど、待子は渋い顔になる。
とてもじゃないけれど…今のバイト代では、とても足りない…
ましてやあの母さんが、お金を出してくれるはずがない…
授業料は出してくれるけれども、生活費や携帯代などは…
自分で稼ぐように、と言われているのだ。
「そんなの、オジサンに言えば、出してくれるんじゃないの?」
無言で考え込む待子の様子に気付いたのか…杏子が心配そうに言う。
「それは…いい」
それでも待子は、キッパリと頭を振ると、
「バイト…増やそうかな?」と一瞬考え込む。
「ねぇ~一緒に行こうよ!
 何だったらうちのママに頼んで、お金を貸してもらうことだって
 出来るんじゃないの?」
 杏子はやはり1人では心細いので、何とか待子に「うん」と
言わせよう…と一生懸命かきくどく。
「うーん」と待子は困ったように考え込むと、
「父さんが…出してくれるかなぁ」
ちょっぴり不安そうに、つぶやいた。
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