桜ハウスへいらっしゃい！

第７章 突然あらわれた謎の住人

１

　　さすがは、大家さん！ただものではない…
慣れた調子で、テキパキと指示を出すと、あっという間に
荷物を室内に、運び込んでもらった…
「ご苦労さん」
まるで自分の家であるかのように…
（実際は、大家さんの持ち物だから、家主であることは間違いない）
待子がオタオタしているうちに、さっさと横から口出しをして、
みるみる人の住む部屋へと、変貌を遂げたのだった。
それをただ、ポカンとして、感心するばかりなのだ。

流しには、冷蔵庫。
窓際には、テレビ。
それに、小さなコタツ机と、整理ダンス。
布団もようやく、ベランダで干され…
鏡台代わりのスタンドミラーが立ち、
ビニールのロッカーを備え付けると、
がらんとして、さして広くもないこの部屋が、一気に
小さくなった。
「ベッドにしなくて　よかったね」
ボンヤリとしている待子に、ひよりちゃんが声をかける。
コクコクと張子の虎のように、首を振ると、
いつの間にかひよりちゃんが、ドアの側に立っていた。
さらに無邪気な顔で、
「すごーい！あっという間に、部屋になったぁ」
嬉しそうに声をあげる。
「よかったわね」
大家さんが、満足そうにうなづくと、
「他にまだ…荷物、来るの？」と、待子に聞いた。

　引き際も鮮やかに…あるべきところに、荷物がおさまったのを、
その目で確かめると…大家さんはさっさと、部屋をあとにした。
「あなたたち…見世物じゃないのよ」
という声がするので、振り返ると…
いつの間にか、ドアのすき間に、鈴なりの住人たちが、
顔をのぞかせていた。