桜ハウスへいらっしゃい!

daisysacky

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第6章  魔女の館へようこそ!

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「ママがね、まだまだ使えるものを、その人生を全うさせてあげるんだ、
 って言ってた。
 大切に最後まで使うんだって」
 ゴミを拾ってくるのは…何もゴミ屋敷にする、ということでは
ないようだ。
むしろひよりちゃんは、どことなく自慢気に言うので、
そう言われれば、そうなのかなぁと、妙に説得力がある。
「机にだってね、椅子にだってね、きれいにすれば、まだまだ
 使えるし…
 棚だってね、ペンキを塗れば、まだまだ使えるんだ、ってママが言うの」
 ひよりちゃんは、お母さんが大好きなのだろう…
ひたすら連呼するので
「なるほど…DIYだねぇ」
話を聞いているうちに、待子はがぜん、ひよりちゃんのお母さんが、
どんな人なのだろう、ととても興味がわいた。
「ひよりちゃんのママって、すごいねぇ」
心底感心したように言うと、
「うん、ママって、スゴイんだぁ」
満足そうに、大きくうなづいた。
「ねぇ、お父さんって、どんな人だったの?」
ひよりちゃんのことを見ていて、思わずポロリと言葉にして
出てしまった…
あわてて「あっ」と口をおさえると、
「ごめん」と口をつぐんだ。

 一瞬、真顔になったひよりちゃん。
しまった!と待子はあきらかに、うろたえた。
せっかく楽しくしていたのに、すっかりぶちこわしかぁ~と
ひどく落ち込むと、
「あっ、大丈夫、大丈夫」
すぐにひよりちゃんは、明るい声を出して、顔を上げる。
「よく聞かれるからねぇ~もう慣れっこよ」
すっかりいつもの顔に戻る。
「ちょっとねぇ、わけがあって、今はママと2人きりなの」
サラリと言うと、食べていたハンバーガーのごみを、要領よく
まとめた。
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