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第6章  魔女の館へようこそ!

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  この部屋にも、小さなコンロはついているけれど、それとは別に、
共同のキッチンが、一階の共同のスペースにあるらしい…
(下見の時に、チラリと見た程度だけれど)
「あそこには、大きな冷蔵庫もあるのよ」
そう言われはするけれど…わざわざ1階に取りに行くのも、おっくうだ。
さすがにそれは、気が引けるので、昨日父貴文と注文して、
今日にでも配達されるはずだ…
「あっ、あとでマックにでも行くつもりで…」
中に入って来ようとするレイコさんを、全力で押しとどめようと
がんばっていると…
レイコさんは「へっ?」という顔になり、ケラケラと笑う。
「なに遠慮してるのよ。
 たくさん作ったから、一緒に食べましょ」
片手でお盆を持ち、片手でトンと、待子の肩を押すようにして、
強引に中に入って来た。

「えっ?えぇっ?」
待子はあわてる。
だってフトンが、敷きっぱなし。
昨日の服も、投げ出しっぱなし。
物は少ないとはいっても、お世辞にも、きれいとはいえない…
ズカズカズカ…
なんの躊躇も、遠慮もなく、上がり込むと、
「あらぁ~ホントに何にもないのねぇ」
大きな声を上げて、レイコさんは立ち止まった。
「机もないのねぇ」
困ったように、部屋のど真ん中で立ちすくむ。
(あ~あ、だから言ったのに)
そう思うけれども。
「いいわ、ここで」
レイコさんの辞書には、遠慮という文字はないらしく、ストンと
畳の真ん中に腰を落とすと、勝手にダンボール箱の1つの
蓋をしめて、持ってきた皿をその上に乗せた。
あまりに堂々としているので、待子は圧倒されてしまい、立ちすくんで
いると…レイコさんはクスッと笑い、
「座れば?」と言った。

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