桜ハウスへいらっしゃい!

daisysacky

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第6章  魔女の館へようこそ!

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(母さんは、今頃何をしてるんだろう)
 突然、泡のように、頭に浮かんできたけれど…
ボンヤリとしながら、時折隣の部屋から漏れ聞こえてくるテレビの音とか、
水道を使う音、電話をする声…などを聴きながら、
とりあえず、ダンボールの中身を取り出していた。
出しても、収納するケースがないのだから、もう1度戻すか、
せいぜい流しの上に置くしかない。
「整理ダンスが欲しいなぁ」
思わず、出るひとり言。
「あとは、ケースも」
何も持って来ない、など不可能なのだ…とあらためて実感した。

 中身をのぞきながら、ため息をつく。
スリーコインズで買った、杏子とのお揃いのマグカップや、小皿…
これはひとまず、流しの所に置く。
「こんなことなら…もっと揃えて置くんだったなぁ」
初めての一人暮らし。
何がいるのか、皆目見当がつかなかった…
今もすることがたくさんあり過ぎて…どこから手をつけたらいいのか、
わからない…
まずは、充電した携帯を開くと、杏子に電話してみよう…と
タッチした。
疲れているのに、目がさえて…
このままでは、中々眠れそうにない…
プルルルル…
呼び出しの音を聞きながら、何気なくふと、窓の方を見ていると…
ベランダ側の窓が、ガタリと大きく揺れたような気がした。

「えっ?なに?」
思わず、携帯から耳を放すと、ビクンと体を硬直させた。
「風?まさか、気のせい…だよね?」
そう思い、気を取り直して、もう1度耳を当てると…
もう1度、ガタンと、今度は間違いなく、窓が音を立てた。
今度は間違い様がない…と、思わず電話を切り、勢いよく
立ち上がった。

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