桜ハウスへいらっしゃい!

daisysacky

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第5章  いざ!出陣!

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  至極真面目な顔をして、淑子が大家さんに言うので…
大家さんは明らかに面食らって、キョトンとしている…
「はっ?おまえ…いきなり、何を言い出すんだ?」
貴文は「正気の沙汰とは思えない…」と、呆れた顔で、そう言った。
すると淑子はまたも真剣な真面目な顔付で…
「だって、大切なことですから!」
キッパリと言い切る。
「出る…って、もしかして、ユーレイのこと?」
ようやく飲み込めたようで、大家さんも、コクリとうなづいている。
…それでも、
「ユーレイは出ないけど…色んなものが、出るわねぇ」
おどけた表情で、大家さんが言うので、淑子は顏をしかめて
「それって、なんですか?」と聞く。
険しい顔で、嘘は許さぬ、という顔をしているので…
大家さんは少しばかり、面食らってもいたのであろう…
それでも、クスリと笑うと…
「何って、ゴキブリでしょ?ムカデとか…ヤモリとか…」
澄ました顏で言うと、虫が苦手な待子の顏から、血の気が引く。
「それは…ちょっと」
困ったように言うと、
「アラ?ムカデはお嫌い?」
話の論点が、微妙にずれてきたようだ。
「虫よりも、まぁ人間が一番、怖いからねぇ」
と言うので、待子はちょっと困った顔になった。
何だか意味ありげに言うので…もしかしたら、ここはワケアリな人の来る、
吹き溜まりなのか…と思ったのだ。
大家さんの思わせぶりな表情が、やはり気になる待子だ。


「ホントーに大丈夫か?」
やけに心配する貴文の袖を、淑子はやや強めに引っ張る。
「大丈夫、大丈夫」
さらにグイグイ引っ張って、
「ほら、そろそろ帰らないと…渋滞に引っかかるわよ」とうながすと、
「それぐらい、どってことない」と、あくまでも娘のことが
気になる貴文だ。
まだ気にかかるようで…待子の方を振り向いた。



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