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第5章 いざ!出陣!
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それも無理はない…と待子はひそかにそう思う。
誰だって、こんな古ぼけた家に、人が住んでいる…とは思わないだろう。
すでに荷物が、先に到着しているようで、玄関先には、大家さんが
立ってこちらを向いているのが見えていた。
「あら、いらっしゃい!」
大家のおばあさんは、気さくに声をかける。
(よかった、覚えていてくれたんだ)
ホッとする待子には気付かずに、父はすぐさま、体を動かした。
初めはその雰囲気に呑まれて、圧倒されていた貴文だったが…
それでもぺこりと頭を下げると、すぐさま、
「あの…車はどこにとめれば?」
まずは車だ…と聞くと
「じゃあ、こちらに…」
大家さんは、ヒョコヒョコと、車に近付く。
するとその傍らに『桜ハウス』に書かれた看板に、目が留まる。
その看板のすぐ近くの空き地を指し示した。
「ごめんなさいね、駐車スペースがあまりないもので…」
言い訳のように言うので…かえって恐縮した様子。
「こちらこそ、よろしくお願いします」
車から出ると…貴文は大きな体を、折り畳んで頭を下げる。
こういうことは、やはり父親だ。
如才なく、さっと体が動くものだ。
母淑子も車から出て来ると、
「ここに置かせてもらっていいですか?」
先ほどよりも打って変わって、顏をゆるめると、こちらもまた
よそ行きの声を出して聞いた。
そんな2人を見ていると、(似たもの夫婦)という言葉が、
待子の頭に浮かんでくる。
「さぁ、あなたも手伝って!」
淑子が助手席に向かって、声をかけると、待子は覚悟を
決めて、車の外に出て来た。
誰だって、こんな古ぼけた家に、人が住んでいる…とは思わないだろう。
すでに荷物が、先に到着しているようで、玄関先には、大家さんが
立ってこちらを向いているのが見えていた。
「あら、いらっしゃい!」
大家のおばあさんは、気さくに声をかける。
(よかった、覚えていてくれたんだ)
ホッとする待子には気付かずに、父はすぐさま、体を動かした。
初めはその雰囲気に呑まれて、圧倒されていた貴文だったが…
それでもぺこりと頭を下げると、すぐさま、
「あの…車はどこにとめれば?」
まずは車だ…と聞くと
「じゃあ、こちらに…」
大家さんは、ヒョコヒョコと、車に近付く。
するとその傍らに『桜ハウス』に書かれた看板に、目が留まる。
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「ごめんなさいね、駐車スペースがあまりないもので…」
言い訳のように言うので…かえって恐縮した様子。
「こちらこそ、よろしくお願いします」
車から出ると…貴文は大きな体を、折り畳んで頭を下げる。
こういうことは、やはり父親だ。
如才なく、さっと体が動くものだ。
母淑子も車から出て来ると、
「ここに置かせてもらっていいですか?」
先ほどよりも打って変わって、顏をゆるめると、こちらもまた
よそ行きの声を出して聞いた。
そんな2人を見ていると、(似たもの夫婦)という言葉が、
待子の頭に浮かんでくる。
「さぁ、あなたも手伝って!」
淑子が助手席に向かって、声をかけると、待子は覚悟を
決めて、車の外に出て来た。
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