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第3章  魔女の館と、人の言う…

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「ここなら、静かに暮らせそうね」
 満足そうに言う淑子を、ルームミラーでチラリと、ヒョウ柄の
不動産屋がのぞき込むと…
「実は、今度いくところは…ちょっと普通とは、違うんです」
なんだか歯に物がはさまったような、ハッキリとしない、物言いだ。
「どういうこと?」
せっかく上機嫌だった、というのに、淑子の眉がみるみるきゅーっと
吊り上がってくる。
フジヨシさんは、言葉に詰まったように
「あのぉ~それが~」
先ほどまで、立て板に水のごとくしゃべっていたのが、嘘のように…
まるで油が切れたゼンマイのように、ぎこちなく口が重くなってくる…

「家主さんが、一緒に住まわれているんです」
 そのこと自体には、取り立てて珍しいことではないけれど…
言葉につまりながら、たどたどしく話すので、まだほかに
何かあるのでは…と疑ってしまう。
「ふぅーん、じゃあ、下宿屋さん?」
特に問題なし、という顔を、淑子はする。
「下宿屋さんというか…」
またもフジヨシさん、言葉を詰まらせる。
一生懸命、何かをごまかそうとしているのが、ミエミエだ…
「なによ、アパートじゃないの?」
淑子の眉が、さらにピキピキッと、音を立てそうなくらい、
さらに吊り上がっていく…

 すると、先ほどまで、黙っていた待子。ふいに、口を開いて…
「もしかして…テラスハウスみたいな、シェアハウスってこと?」と聞くと、
「あぁ、それそれ!」
明らかにホッとしたように、フジヨシさんは、思わず大きな声になった。
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