ラストダンスはあなたと…

daisysacky

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番外編

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「サヨちゃん…?」
 彼女の反応が、信じられなかった…
あんなにも優しくて、可愛かったサヨちゃん。
いつも片時も離れずに、まるで双子の兄妹みたいに…一緒に遊んだのに…
将来のことを、約束していた、あの彼女が…
人違いだろうか?
まさか他人の空似だろうか?
だが、確かに幼い頃の面影が、まだ残っているというのに…
まるでおぞましいものを見るような目で、冷ややかにボクを見ているのだ。

「なによ、あなた!
 そんな顔をして…この私と、付き合えると思った?」
眉をキュッとしかめて、ボクをにらんでいる。
(どうして?)
信じられない思いで、その場に立ちすくむ。
すると、憎々し気に彼女はボクを見ると
「あなたとキスをするくらいなら…
 ヒキガエルとする方がマシよ」
おぞましいものを見る目で、彼女は言い放つ。

(そういうことなのか…)
 ボクはようやく、理解した。
どうやらボクは…人に嫌悪感をもよおすくらい、醜い顔をしているようだ…
 事故の後、母は家中の鏡を、すべて隠してしまった。
おそらくはボクに、見せたくなかったのだろう。
自分がどれほど醜いのか、分かってはいなかったのだ。
肩を落としてうつむくボクに
「ホント、信じられない」
彼女の声が、石つぶてのように、投げつけられた。

 その後、どうやって帰ったのか、記憶にない…
「どうしたの?」
帰ったボクを見て、心配そうに母が声をかけてきた。
だがあまりのショックに、声も出ず、部屋のカーテンをピシャリと閉め、
そのままベッドにもぐりこんだ。
 その日からボクは、部屋から出ることが、出来なくなったのだ…


 もう2度と、人に心を許すものか、そう思っていた。
今は、生ける屍として、この城で命が尽きるまで…
亡霊のように、生きてやる、そう思っていた。
だが…
今また自分の目の前に、小さな翼を広げて、
旅立とうとする小鳥がいる…
 初めは 信じられなかった。
なぜならば…
あの幼い日に出会った、あの女の子がそのまま、
自分の目の前に、現れたのだ。
(見た目は別人なのだが…)
サヨちゃん…
そう思わず、声をかけそうになる。
そんなボクを、彼女はまっすぐな瞳を向けて、
「怪人さん…」
そうボクのことを、呼んだ…


    おわり…

長い間、ありがとうございました。
明日からは『ダンナ様はエスパー?』を書きます。
よろしければ、引き続きお付き合いくださいね!
いつもありがとうございます!

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