ラストダンスはあなたと…

第17章 すべてはまぼろしに…

１４

　　どこへ行くのだろう…と見ていると、わずかに焼け残った
温室の方へと、向かっているようだ。
思わずついて行こうと、珠紀が足を踏み出すと
「行かない方がいいんじゃないの？」
あわてて玲が、ぐぃっと珠紀の腕を引いた。
「えっ」
急にガクンと後ろに引っ張られ、不満そうに声を上げると、
玲はただ頭を振って、さらに珠紀の腕を引いた。

　自分は一体、何をしようとしているのだろう…
急に珠紀は、ひどくみじめな気持になる。
自分の前から、姿を消した人を探すなんて…
嫌われたんじゃないか、とひそかに珠紀を傷つけていた。

　そんなことをしている間に、山内さんが何か紙袋を手にして、
戻って来た。
　一体、なに？と思うけれど、彼女は黙って、袋からあるものを
取り出した。
「えっ」
思わずその場にいた、玲もそれをのぞき込む。
それは…少し小さいキャンバスだった。
　そこには、1人の女の子が描かれていた。

「これって…珠紀にそっくり！」
思わず玲がつぶやく。
「ホント？」
2人の視線が、その小さな絵に吸い寄せられている。
「なに、これ？」
「この子…誰？」
コソコソと言い合う様を、山内さんは微笑みながら、見守っている。
「どうして？これ、なに？」
すっかり本来の目的を忘れ、何か探しているようだ。