267 / 286
第17章 すべてはまぼろしに…
4
しおりを挟む
思いつめたように、ずっと下を向いている珠紀を見ると、
玲は心配そうに、
「ね、珠紀…大丈夫?」
思わず声をかける。
青白い顔をしているけれど、珠紀はコクンとうなづくと
「ねぇ…あそこに行くには、どうやって行ったらいいか、知ってる?」
毅然と顔を上げて、玲に聞いた。
「どうしても、行くつもりなのか?」
玲に頼まれて、秀人が珠紀に会いに来た。
先ほどから、コーヒーカップの取っ手をもてあそびながら、
「はい」
キッパリとした口調で、珠紀はうなづく。
あれほど憔悴しきって、抜け殻のようだった彼女は、可哀そうなくらい
やつれてはいたけれど、それでも目だけはギラギラと光を放っている。
青白い顔、こけた頬。
目の下のクマも、さらに濃くはなっていたけれど…
恐ろしいほどの気迫で、秀人を圧倒していた。
(あれ?この子、こんな感じだったっけ?)
苦労知らずの、普通の女の子に見えていた…
だが目の前の彼女は、それとは真反対の…
ひどく疲れ切った顔をしていた。
さらには、まるで何かにとりつかれているような…迫力が
その目に宿っていた。
「本気なのか?」
それでも、もう1度尋ねる。
可愛い後輩だろうが、恩師であろうが、
応対は1つ。
問題なく行って帰れるのかどうかなんだ」
実は彼女の友達の玲から、相談があったのだ。
もう1度、あのホテルに行きたい…と、珠紀が言っているのだが、
という相談だった。
もちろん、連れて行くべきではない、と、秀人は思っていた。
なぜならば、すでに廃業した、と聞いていたし、放火だった、と聞いていたからだ。
玲は心配そうに、
「ね、珠紀…大丈夫?」
思わず声をかける。
青白い顔をしているけれど、珠紀はコクンとうなづくと
「ねぇ…あそこに行くには、どうやって行ったらいいか、知ってる?」
毅然と顔を上げて、玲に聞いた。
「どうしても、行くつもりなのか?」
玲に頼まれて、秀人が珠紀に会いに来た。
先ほどから、コーヒーカップの取っ手をもてあそびながら、
「はい」
キッパリとした口調で、珠紀はうなづく。
あれほど憔悴しきって、抜け殻のようだった彼女は、可哀そうなくらい
やつれてはいたけれど、それでも目だけはギラギラと光を放っている。
青白い顔、こけた頬。
目の下のクマも、さらに濃くはなっていたけれど…
恐ろしいほどの気迫で、秀人を圧倒していた。
(あれ?この子、こんな感じだったっけ?)
苦労知らずの、普通の女の子に見えていた…
だが目の前の彼女は、それとは真反対の…
ひどく疲れ切った顔をしていた。
さらには、まるで何かにとりつかれているような…迫力が
その目に宿っていた。
「本気なのか?」
それでも、もう1度尋ねる。
可愛い後輩だろうが、恩師であろうが、
応対は1つ。
問題なく行って帰れるのかどうかなんだ」
実は彼女の友達の玲から、相談があったのだ。
もう1度、あのホテルに行きたい…と、珠紀が言っているのだが、
という相談だった。
もちろん、連れて行くべきではない、と、秀人は思っていた。
なぜならば、すでに廃業した、と聞いていたし、放火だった、と聞いていたからだ。
0
お気に入りに追加
9
あなたにおすすめの小説
怪演!ゴーストレストラン
日向コタ
ライト文芸
錦光太(にしきこうた)は公立高校に通う高校1年生。光太は高校での授業が退屈で、なかなか頭に入って来なかった。
ある日、光太はある出来事をきっかけにゴーストの零(れい)と出会う。
光太と零は、人間と幽霊という垣根を越えて、町のレンタルキッチン「クッチーナ」を借りて、レストラン運営にチャレンジしていく。
二人の"夢"を叶えるべく奔走する姿を描いた物語。
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
我っ娘はネコである!! ~ダンジョンコアの力で老猫(14歳)が少女(14歳)に生まれ変わったら~
東堂大稀(旧:To-do)
ファンタジー
「我はネコである!名前はナイ!」
突然現れ、そう宣言したのは黒髪金目の全裸の少女だった。
14歳の老猫のナイは、主人の賢者ブリアックの死を切っ掛けに自由な野良猫になった。
ちょっとした好奇心からナイは引率付きの初心者冒険者のパーティーの後を追いかけ、ダンジョンへと入ってしまう。
そこでナイと冒険者パーティーは『彷徨える落とし穴』と呼ばれる強制転移ポイントに落とされ、ダンジョン最下層に送り込まれてしまうのだった。
危機的状況に陥る冒険者パーティー。
そこに現れたのは、ダンジョンコアの力で14歳の少女となった元猫のナイだった!
※ ※ ※
猫の14歳は老猫ですが、人間の14歳は少女だよなという発想からの作品です。
14歳の少女ナイは、老猫だったため上から目線で猫らしく自分勝手な性格をしています。
そして、それに振り回されるのが、お人好しで有名な29歳の中堅冒険者のアルベルトです。
ハッキリ言って、タイトル出オチの作品です。
最初は某有名小説そのままのタイトルにして、ナイの一人称を『吾輩』にしようとしてましたが、さすがにそれはマズそうなので現在のタイトルになって、一人称も『我』の我っ娘に。
一応、10万字くらいを区切りにして書き進めていますので、よろしくお付き合いください。
助けてください!エリート年下上司が、地味な私への溺愛を隠してくれません
和泉杏咲
恋愛
両片思いの2人。「年下上司なんてありえない!」 「できない年上部下なんてまっぴらだ」そんな2人は、どうやって結ばれる?
「年下上司なんてありえない!」
「こっちこそ、できない年上の部下なんてまっぴらだ」
思えば、私とあいつは初対面から相性最悪だった!
人材業界へと転職した高井綾香。
そこで彼女を待ち受けていたのは、エリート街道まっしぐらの上司、加藤涼介からの厳しい言葉の数々。
綾香は年下の涼介に対し、常に反発を繰り返していた。
ところが、ある時自分のミスを助けてくれた涼介が気になるように……?
「あの……私なんで、壁ドンされてるんですか?」
「ほら、やってみなよ、体で俺を誘惑するんだよね?」
「はあ!?誘惑!?」
「取引先を陥落させた技、僕にやってみなよ」
恋とかできるわけがない 〜ヲタクがJC拾ってもなにもできない件
茉莉 佳
ライト文芸
『朝、目がさめると、隣に美少女が眠っていた、、、』
そんな鉄板な、だけどヲタクにとっては最高のドリーム&ファンタジーなシチュエーションに、リアルに遭遇した同人絵師のミノル。
彼女いない歴22年=年齢のデブサヲタ主人公が織りなす、美少女JCとイケメンコスプレカメコ、美人巨乳レイヤーとバーチャルカノジョをめぐる、壮絶で哀しくおかしく、ヲタクなラブストーリー。
*この作品はフィクションであり、実在の人物・地名・企業、商品、団体等とは一切関係ありません。
ダッシュの果て、君と歩める世界は
粟生深泥
ライト文芸
町に伝わる“呪い”により祖父と父を亡くした宮入翔太は、高校二年生の春、「タイムマシンは信じるか」と問いかけてきた転入生の神崎香子と知り合う。その日の放課後、翔太の祖母から町に伝わる呪いのことを聞いた香子は、父と祖父の為に呪いの原因を探る翔太に協力することを約束する。週末、翔太の幼なじみの時乃を交えた三人は、雨の日に登ると呪いにかかるという深安山に向かい、翔太と時乃の話を聞きながら山頂で香子は試料を採取する。
それから一週間後、部活に入りたいと言い出した香子とともにオーパーツ研究会を訪れた翔太は、タイムトラベルについて調べている筑後と出会う。タイムトラベルに懐疑的な翔太だったが、筑後と意気投合した香子に巻き込まれるようにオーパーツ研究会に入部する。ゴールデンウィークに入ると、オーパーツ研究会の三人はタイムトラベルの逸話の残る坂巻山にフィールドワークに向かう。翔太にタイムトラベルの証拠を見せるために奥へと進もうとする筑後だったが、鉄砲水が迫っていると香子から告げられたことから引き返す。その後、香子の言葉通り鉄砲水が山中を襲う。何故分かったか問われた香子は「未来のお告げ」と笑った。
六月、時乃が一人で深安山に試料を採りに向かう途中で雨が降り始める。呪いを危惧した翔太が向かうと、時乃は既に呪いが発症していた。その直後にやってきた香子により時乃の呪いの症状は治まった。しかしその二週間後、香子に呪いが発症する。病院に運ばれた香子は、翔太に対し自分が未来の翔太から頼まれて時乃を助けに来たことを告げる。呪いは深安山に伝わる風土病であり、元の世界では呪いにより昏睡状態に陥った時乃を救うため、翔太と香子はタイムトラベルの手法を研究していた。時乃を救った代償のように呪いを発症した香子を救う手立てはなく、翌朝、昏睡状態になった香子を救うため、翔太は呪いとタイムトラベルの研究を進めることを誓う。
香子が昏睡状態に陥ってから二十年後、時乃や筑後とともに研究を進めてきた翔太は、時乃が深安山に試料を採りに行った日から未来を変えるためにタイムトラベルに挑む。タイムトラベルに成功した翔太だったが、到達したのは香子が倒れた日の夜だった。タイムリミットが迫る中、翔太は学校に向かい、筑後に協力してもらいながら特効薬を作り出す。間一髪、特効薬を香子に投与し、翌朝、香子は目を覚ます。お互いの為に自分の世界を越えてきた二人は、なんてことの無い明日を約束する。
ニート生活5年、俺の人生、あと半年。
桜庭 葉菜
ライト文芸
27歳、男、大卒、なのに無職、そして独身、挙句に童貞。
家賃4万、1Rのボロアパート。
コンビニでバイトか家で過ごすだけの毎日。
「俺の人生、どこで狂ったんだろう……」
そんな俺がある日医者に告げられた。
「余命半年」
だから俺は決めたんだ。
「どうせ死ぬなら好き勝手生きてみよう」
その決断が俺の残り少ない人生を大きく変えた。
死を代償に得た、たった半年の本当の人生。
「生きるのってこんなに楽しくて、案外簡単だったんだな……」
ゆずちゃんと博多人形
とかげのしっぽ
ライト文芸
駅をきっかけに始まった、魔法みたいな伝統人形の物語。
ゆずちゃんと博多人形職人のおじいさんが何気ない出会いをしたり、おしゃべりをしたりします。
昔書いた、短めの連載作品。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる