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第17章  すべてはまぼろしに…

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  傷心のままに、抜け殻のようになった珠紀をかかえるようにして、
彼らは山を下りた。
初めてここに来てから、1か月あまり経った頃だった。

 初めは引きこもり…口もろくに、きかない状態だった。
そこへ玲や友達が、毎日入れ替わり立ち代わり、珠紀のゴキゲンうかがいに
やって来るのだ。
友人たちのお陰で、彼女はこれ以上…寂しいという思いは、
することがなかった。
日にち薬いう言葉通りに…次第に薄皮がはがれていくように、
珠紀の心の痛みも、癒えていった。
 ようやく普通の生活に戻れるようになっていた。
それでもふとしたキッカケで、あの日の苦しそうにゆがんだ、
武雄の顔が思い浮かぶのだ…
あの悲しそうな瞳が、今でも珠紀の目の奥に、焼き付いて
離れない…
(あの人、今、どこでどうしているのだろう?)
ひそかにそう思うように、なっていった。

 元の暮らしに戻っても、今迄のように、心から楽しむことが
出来なくなっていた。
何だか色のない世界に、いるような…
ここは、自分のいるべき場所ではないような…
そんな気がするのだ。
 そうして彼女の心は、いつも上の空で、
あそこは今、どうなっているのだろう…と、
そればかり、考えているような日々だった。

 そんなある日…大学のラウンジで、いつものようにボーっとしていると、
いきなり玲が、珠紀を探してやって来た。
「ねぇ、珠紀!あなた、知ってる?」
あわててやって来たのか、はぁはぁと息を切らしている。
「知ってるって…なにを?」
まだボンヤリとした顔で、聞き返した。
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