ラストダンスはあなたと…

daisysacky

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第 16章  最初で最後の思い出を…

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「誰?」
 思わず珠紀は、鋭い声を出す。
「キミ…無事だったんだねぇ」
ニコリと笑って、こちらを見ていたのは…秀人先輩だった。
「あっ、はい…」
嬉しくなり、思わず返事をすると…
背後の方で、こちらを見ている視線を感じる。
「なんで…ここに?」
少し離れた場所でたたずみ、うめくように武雄はつぶやく。
 ついに、その日がきてしまったのかぁ…
武雄は感傷的な気持で、眺める。
もっとも恐れていた日、出来れば来ないで欲しい…
そう願っていた日でもあった。
 秀人は武雄をじぃっと見つめ返す。
「珠紀を返してもらおう」
 毅然とした態度でそういうと、ゆっくりと近づいて来た。


  まさか秀人が、彼に殴りかかるのか…と、やや緊張して
いたのだが…
珠紀はそれを恐れ
「先輩、ちがうの!
 彼は、私を帰してくれるつもりなの」と叫んでいた。
「珠紀…あなた、どうしちゃったの?」
驚いた眼で、玲が見る。
 なんで、こんな人をかばうの?
そうつぶやいた。
「いや、ちがう。
 みんな誤解しているんだ」
まだ納得したわけではない。
さらに、今にも秀人に飛び掛かろうとしているように
見えたので…
「先輩、やめて!」
悲鳴を上げて、秀人にとりついた。

「どうしちゃったの、珠紀?」
すっかり洗脳されてしまったの?
玲は憐れむような視線を、向ける。
「違うの、彼はとてもいい人なの。
 みんなの思うような…そんなひどい人ではないのよ」
なぜだか、ツツ~と涙がこぼれる。
武雄は一瞬ひるんだように、珠紀を見ていたが、
意を決して、ヒラリと身をひるがえすと、いきなり走り出した。


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