ラストダンスはあなたと…

daisysacky

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第 16章  最初で最後の思い出を…

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(この人…本当は、どんな人なのだろう?)
 いつも不機嫌なのが、本来の姿なのか、
それとも今、こうしている瞬間が、本当の彼なのか?
珠紀は、あまりにも違うその顔に、判断しかねていた。
2人のために、しつらえた…と言っても過言ではない。
この特別な場所は、ちっとも急ごしらえのようにも見えない。
貧相でもないし、広過ぎでも、狭すぎてもいなかった。
それに…この場所自体にでも、特殊な魔法でもかかっているのか、
いつもは不愛想な武雄が、終始にこやかな笑みを浮かべているし。
疲れたら…脇にある椅子に座って、ワインを飲んでもいい…
そう思うとすぐに、
(あっ、しまった、未成年だった!)
思わず耳まで、熱くなるのを感じた。

 何も余計なことを考えずに、その場の雰囲気に酔って過ごせることが、
こんなに幸せなことだとは…今まで、知らなかった。
それは生まれて初めての感覚だった。
さらには時折…彼の足を踏んづけたり、蹴ってしまったりしているけれど
(誓って、わざとではない!)
それでも…下手は下手なりに、こんな自分でも踊れている…
というのも、新たな発見だった。
出来ることなら、このまま…ずぅっとこうしていたい、とまで思っていた。
全てを忘れて、踊ったり、軽く何かをつまみながら、オシャベリしたり…
そんなたわいもないことだけど、こんなに楽しいものだとは、
知らなかった、とあらためてそう思う。
今までなんと、もったいないことをしていたのだろう。
 すべてを忘れたい 
 先のことなど、気にせずに。
 心の底から、そう切望したけれど…
もちろん、それだからといって、急に変わるわけでもないのだ。



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