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第15章  ラストダンスはあなたと…

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「どうして?」
 思わず珠紀は漏らす。
なぜなら自分たちの方が、先に出たはずだ。
だから空を飛ばない限り…これはあり得ない、と思ったからだ。
 すると山内さんが、ケラケラと笑い、
「そりゃあ私たち…先回りをしたからねぇ」
 先回り?
 ならばやっぱり、この車はかなり大回りをした、ということだ…
「だまされたでしょ?」
山内さんは、満足そうな顔をした。

「ここって、ホテルの近くの池ですか?」
目の前に広がる池を振り向いて、彼女に聞いた。
山内さんは、大きく目を見開き
「あらぁ、わかっちゃいました?」
大げさに目をむいて、驚いてみせる。
「えぇ」
「やっぱり!それなら、わざわざ目隠しをする必要はなかったわね」
肩すくめてみせるので、思わず珠紀はつられて笑う…
「ここって?」
目の前にある古い屋敷を見つめる。

 石造りのかなり古びた洋館だ。
この前来た時には、この屋敷の存在に気付かなかったのだけれど…
大きなクスノキの陰に、隠れていたせいなのだろう…
「ここはね、昔ここの領主さんが住んでいた家なのよ」
淡々と山内さんは、珠紀に告げる。
「そうなんですか?」
思ったよりも大きくて…しっかりとした造りだ。
まさか武雄が?と思っていたけれど、
「さすがに、それはないよ」
いきなり彼が言った。
「ま、もっとも…今は誰も住んでいないけどね」
そう言うと…彼が姿を現すと、あらためて珠紀に向かって
手を差し出す。
 手を取るのはちょっとためらわれ、戸惑ってはいたけれど…
思い切って歩み出る。
「いきなり家移りをして、申し訳なかった」
突然彼が、珠紀に向かって、頭を下げた。
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