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第14章 混線
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「そうだ」
「寂しくはないですか?」
「そんなこと…考えたこともないな!」
彼はあっさりと否定する。
あの話が本当ならば、彼はこの建物の隅で、誰の目にも触れないようにと、
ずっと息をひそめて隠れるようにして、暮らしてきた、
ということになる。
そんなことは、可能なのだろうか?
珠紀は、先ほどからずっと、そのことで頭がいっぱいだ。
一方彼は、何で珠紀がそんなことを聞くのか、といぶかし気な瞳で、
珠紀のことを見ていた。
もしかして、うるさかったのだろうか?
珠紀が首をちぢめると、あわててパンをポンと口に放り込む。
だが彼は相変わらず、遠くを見つめたまんま。
珠紀のことを、うとましく思っているようには、見えなかった。
「私…友達がいるんです」
ポツンと珠紀が言う。
彼は相変わらず、黙っているが、珠紀はまったく気にすることなく、
話し続ける。
「彼女、高校からの友達なんです」
珠紀の視線を、まったく気にすることなく、打ち明ける。
「へぇ~」
「私、高校の時に、イジメにあっていて、中々友達が
出来なかったんです。
でも、玲だけは…そんな私に話かけてくれた、
たった1人の友達なんです」
武雄が聞いていようが、いまいが、珠紀は勢いがついたのか、
1人で話続ける。
まるで壁に向かって、話をしているみたい…
ふと珠紀は、そう思った。
「私たち…とても馬が合って、それからいつも一緒にいて、
大学も…玲が行くというから、一生懸命がんばって、
同じ大学に入ったんです」
およそ似つかわしくなく、話が続いている。
自分でも、何でそんな話をしているのだろう…と呆れるけれども。
「アパートもね、スープの冷めない距離?
ホント、お互いにすぐ近くに住んでいるんです。
母がね、玲が男の子だったら、よかったのにね、と
からかうんですよ!」
ニコニコしながら、珠紀が話している。
話しているだけで…何だか気持ちがやわらぐのを感じた。
「寂しくはないですか?」
「そんなこと…考えたこともないな!」
彼はあっさりと否定する。
あの話が本当ならば、彼はこの建物の隅で、誰の目にも触れないようにと、
ずっと息をひそめて隠れるようにして、暮らしてきた、
ということになる。
そんなことは、可能なのだろうか?
珠紀は、先ほどからずっと、そのことで頭がいっぱいだ。
一方彼は、何で珠紀がそんなことを聞くのか、といぶかし気な瞳で、
珠紀のことを見ていた。
もしかして、うるさかったのだろうか?
珠紀が首をちぢめると、あわててパンをポンと口に放り込む。
だが彼は相変わらず、遠くを見つめたまんま。
珠紀のことを、うとましく思っているようには、見えなかった。
「私…友達がいるんです」
ポツンと珠紀が言う。
彼は相変わらず、黙っているが、珠紀はまったく気にすることなく、
話し続ける。
「彼女、高校からの友達なんです」
珠紀の視線を、まったく気にすることなく、打ち明ける。
「へぇ~」
「私、高校の時に、イジメにあっていて、中々友達が
出来なかったんです。
でも、玲だけは…そんな私に話かけてくれた、
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武雄が聞いていようが、いまいが、珠紀は勢いがついたのか、
1人で話続ける。
まるで壁に向かって、話をしているみたい…
ふと珠紀は、そう思った。
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自分でも、何でそんな話をしているのだろう…と呆れるけれども。
「アパートもね、スープの冷めない距離?
ホント、お互いにすぐ近くに住んでいるんです。
母がね、玲が男の子だったら、よかったのにね、と
からかうんですよ!」
ニコニコしながら、珠紀が話している。
話しているだけで…何だか気持ちがやわらぐのを感じた。
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