ラストダンスはあなたと…

daisysacky

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第14章 混線

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「大丈夫だよ! 
 いざとなったら、クレジットカードだってある」
あっさりと先輩がそう言う。
(これだから…お金持ちのボンボンはダメなのよねぇ)
玲は思う。
庶民の底力を、なめんなよ、と。
もっとも自分はどうなのよ、とも思うけれども。
(もしここに珠紀がいたら…何と思うのかなぁ)
思わず聞いてみたい、と玲は思う。
そう思うと、思わず顔がほころんでくるのだった。

 もちろん当初は、ホテルの中を探索していた。
もしかしたら、隠し部屋か、何かあるのではないか、と思っていたのだ。
まるで中世のお城のような、古い建物…
おそらくは、地下や屋上の方に隠し部屋があるのではないか、と
にらんでいたからだ。
「そんなもの…あるわけがないだろ?」
そう言っても、全く信じずヘラヘラと笑うばかりだ。
「でも…」
玲は思い出す。
廊下に、等間隔で飾ってある不気味な肖像画のことを。
柱の影に隠された…下の階への階段。
他にも気になる箇所は、幾つもあるのに…
今迄どうして探しもしなかったのか、玲としては不満なのだ。
(こうしてる間にも、珠紀が不安に思っているんだ)
そう思うと…いてもたってもいられない気持になるのだ。

 どこかで鐘の音が鳴り響く…
「ね、どうする?
 このままいても、何の進展もなかったら?」
やや困った様子で、彼を見やると、
「そんなの、やってみないとわからないだろ?
 君も他の連中と、同じなのか?」
うんざりした目で、秀人は玲を見る。
違う、と玲は頭を振る。
でも…と、考え込んでいると、やけに冷ややかな目で、玲は
秀人に見返されたのだった。
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