158 / 286
第12章 優しくしてよ、モンスター
14
しおりを挟む
かすかに風が吹いて、バラの花びらが、さやさやと揺れる。
「これだけ立派なお庭…見たことがありません」
珠紀はニッコリと微笑む。
男はまだ、珠紀の真意がつかめずに、戸惑っている。
素直に喜んでいいのか、それともなにかあるのか…
ひどく警戒しているようにも見える。
「勝手に入ってきたのは、私…ですもんね」
ポツリと珠紀はつぶやく。
「きっと…あなたのことも、傷つけたんですね」
そう言うと、ゆっくりと男の方へと歩み寄り、
「ごめんなさい」再び謝った。
「どうしてあやまるの?」
不思議そうに、珠紀は男を見上げる。
「私の方が、謝らないといけないのに…」
「いや、ボクが君を、ここに連れてこなければ…
キミはみんなと一緒に、帰れてたのに」
今日の彼は、いつもと違う。
何か山内さんから、言われたのだろうか?
思わず深読みをして、珠紀は頭を横に振ると
「こんなことがなかったら、この庭のすばらしさには
気付かなかったと思うわ」
そう言って、ニッコリと微笑む。
照れたように、男は目をそらすと
「山内さんが、何かしようと考えているようだ」
と、ボソリと言う。
「あのオバサンって、本当に世話焼きなんですね」
いい人なんだけど…と、珠紀はニヤニヤとする。
「あなたのこと…本当に、大切に思ってるみたいよ」
からかうようにして、言って見ると、彼は怒ることなく
「そうなんだろうね」
思ったよりも素直に、うなづいた。
(どうしたの?今日はいつもとは別人みたい)
終始にこやかな彼を見て、なぜなんだ、とついつい珠紀は
気にかかる。
そのこと自体は、問題ないけれど…
何だか居心地の悪い思いがした。
「このバラは…母が大切にしていたものなんだ」
突然男は、明後日の方を向いて、珠紀に告げる。
「ボクが外に出られなくなってから、母の心の拠り所は、
このバラだったんだ…」
しみじみと、彼は背中を向けたまま、言った。
「これだけ立派なお庭…見たことがありません」
珠紀はニッコリと微笑む。
男はまだ、珠紀の真意がつかめずに、戸惑っている。
素直に喜んでいいのか、それともなにかあるのか…
ひどく警戒しているようにも見える。
「勝手に入ってきたのは、私…ですもんね」
ポツリと珠紀はつぶやく。
「きっと…あなたのことも、傷つけたんですね」
そう言うと、ゆっくりと男の方へと歩み寄り、
「ごめんなさい」再び謝った。
「どうしてあやまるの?」
不思議そうに、珠紀は男を見上げる。
「私の方が、謝らないといけないのに…」
「いや、ボクが君を、ここに連れてこなければ…
キミはみんなと一緒に、帰れてたのに」
今日の彼は、いつもと違う。
何か山内さんから、言われたのだろうか?
思わず深読みをして、珠紀は頭を横に振ると
「こんなことがなかったら、この庭のすばらしさには
気付かなかったと思うわ」
そう言って、ニッコリと微笑む。
照れたように、男は目をそらすと
「山内さんが、何かしようと考えているようだ」
と、ボソリと言う。
「あのオバサンって、本当に世話焼きなんですね」
いい人なんだけど…と、珠紀はニヤニヤとする。
「あなたのこと…本当に、大切に思ってるみたいよ」
からかうようにして、言って見ると、彼は怒ることなく
「そうなんだろうね」
思ったよりも素直に、うなづいた。
(どうしたの?今日はいつもとは別人みたい)
終始にこやかな彼を見て、なぜなんだ、とついつい珠紀は
気にかかる。
そのこと自体は、問題ないけれど…
何だか居心地の悪い思いがした。
「このバラは…母が大切にしていたものなんだ」
突然男は、明後日の方を向いて、珠紀に告げる。
「ボクが外に出られなくなってから、母の心の拠り所は、
このバラだったんだ…」
しみじみと、彼は背中を向けたまま、言った。
0
お気に入りに追加
9
あなたにおすすめの小説
転生チート薬師は巻き込まれやすいのか? ~スローライフと時々騒動~
志位斗 茂家波
ファンタジー
異世界転生という話は聞いたことがあるが、まさかそのような事を実際に経験するとは思わなかった。
けれども、よくあるチートとかで暴れるような事よりも、自由にかつのんびりと適当に過ごしたい。
そう思っていたけれども、そうはいかないのが現実である。
‥‥‥才能はあるのに、無駄遣いが多い、苦労人が増えやすいお話です。
「小説家になろう」でも公開中。興味があればそちらの方でもどうぞ。誤字は出来るだけ無いようにしたいですが、発見次第伝えていただければ幸いです。あと、案があればそれもある程度受け付けたいと思います。
恋とかできるわけがない 〜ヲタクがJC拾ってもなにもできない件
茉莉 佳
ライト文芸
『朝、目がさめると、隣に美少女が眠っていた、、、』
そんな鉄板な、だけどヲタクにとっては最高のドリーム&ファンタジーなシチュエーションに、リアルに遭遇した同人絵師のミノル。
彼女いない歴22年=年齢のデブサヲタ主人公が織りなす、美少女JCとイケメンコスプレカメコ、美人巨乳レイヤーとバーチャルカノジョをめぐる、壮絶で哀しくおかしく、ヲタクなラブストーリー。
*この作品はフィクションであり、実在の人物・地名・企業、商品、団体等とは一切関係ありません。
トイレの聖女様! ~我々が必要としているのは聖女であって便所ではない! と追放された召喚聖女、砂漠の獣と奇跡を起こす!~
神通力
ファンタジー
「会社にも行きたくないが、ウォシュレットもエアコンもシャワーもない異世界になんかもっと行きたくない!」と駄々を捏ねた結果、『エアコン完備のユニットバス使い放題』なるチートを押し付けられ「滅びかけの国を救え」と異世界に放り込まれたアラサー召喚聖女、御手洗清美(みたらいきよみ)は些細な誤解から褐色イケメン王子軍団と盛大に喧嘩別れしてしまい、成り行きで砂漠に住まう虎獣人の部族に厄介になる事に。彼女を命の恩人と慕う武人、彼女に利用価値を見出す族長、彼女の存在が面白くない族長の息子など、虎・虎・虎! な美女と野獣の織り成す異世界聖女ライフをお楽しみください!
家賃一万円、庭付き、駐車場付き、付喪神付き?!
雪那 由多
ライト文芸
恋人に振られて独立を決心!
尊敬する先輩から紹介された家は庭付き駐車場付きで家賃一万円!
庭は畑仕事もできるくらいに広くみかんや柿、林檎のなる果実園もある。
さらに言えばリフォームしたての古民家は新築同然のピッカピカ!
そんな至れり尽くせりの家の家賃が一万円なわけがない!
古めかしい残置物からの熱い視線、夜な夜なさざめく話し声。
見えてしまう特異体質の瞳で見たこの家の住人達に納得のこのお値段!
見知らぬ土地で友人も居ない新天地の家に置いて行かれた道具から生まれた付喪神達との共同生活が今スタート!
****************************************************************
第6回ほっこり・じんわり大賞で読者賞を頂きました!
沢山の方に読んでいただき、そして投票を頂きまして本当にありがとうございました!
****************************************************************
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
re:太平洋戦争・大東亜の旭日となれ
俊也
ライト文芸
実際の歴史では日本本土空襲・原爆投下・沖縄戦・特攻隊などと様々な悲劇と犠牲者を生んだ太平洋戦争(大東亜戦争)
しかし、タイムスリップとかチート新兵器とか、そういう要素なしでもう少しその悲劇を防ぐか薄めるかして、尚且つある程度自主的に戦後の日本が変わっていく道はないか…アメリカ等連合国に対し「勝ちすぎず、程よく負けて和平する」ルートはあったのでは?
そういう思いで書きました。
歴史時代小説大賞に参戦。
ご支援ありがとうございましたm(_ _)m
また同時に「新訳 零戦戦記」も参戦しております。
こちらも宜しければお願い致します。
他の作品も
お手隙の時にお気に入り登録、時々の閲覧いただければ幸いです。m(_ _)m
一よさく華 -渡り-
八幡トカゲ
ライト文芸
自分を狙った人斬りを小姓にするとか、実力主義が過ぎませんか?
人斬り 柚月一華(ゆづき いちげ)。
動乱の時代を生きぬいた彼が、消えることのない罪と傷を抱えながらも、新たな一歩を踏み出す。
すべてはこの国を、「弱い人が安心して暮らせる、いい国」にするために。
新たな役目は、お小姓様。
陸軍二十一番隊所属宰相付小姓隊士。宰相 雪原麟太郎(ゆきはら りんたろう)は、敵方の人斬りだった柚月を、自身の小姓に据えた。
「学びなさい。自分で判断し、決断し、行動するために」
道を失い、迷う柚月に雪原は力強く言う。
「道は切り開きなさい。自分自身の力で」
小姓としての初仕事は、新調した紋付きの立派な着物を着ての登城。
そこで柚月は、思わぬ人物と再会する。
一つよに咲く華となれ。
※「一よさく華 -幕開け- 」(同作者)のダイジェストを含みます。
長編の「幕開け」編、読むのめんどくせぇなぁって方は、ぜひこちらからお楽しみ下さい。
我っ娘はネコである!! ~ダンジョンコアの力で老猫(14歳)が少女(14歳)に生まれ変わったら~
東堂大稀(旧:To-do)
ファンタジー
「我はネコである!名前はナイ!」
突然現れ、そう宣言したのは黒髪金目の全裸の少女だった。
14歳の老猫のナイは、主人の賢者ブリアックの死を切っ掛けに自由な野良猫になった。
ちょっとした好奇心からナイは引率付きの初心者冒険者のパーティーの後を追いかけ、ダンジョンへと入ってしまう。
そこでナイと冒険者パーティーは『彷徨える落とし穴』と呼ばれる強制転移ポイントに落とされ、ダンジョン最下層に送り込まれてしまうのだった。
危機的状況に陥る冒険者パーティー。
そこに現れたのは、ダンジョンコアの力で14歳の少女となった元猫のナイだった!
※ ※ ※
猫の14歳は老猫ですが、人間の14歳は少女だよなという発想からの作品です。
14歳の少女ナイは、老猫だったため上から目線で猫らしく自分勝手な性格をしています。
そして、それに振り回されるのが、お人好しで有名な29歳の中堅冒険者のアルベルトです。
ハッキリ言って、タイトル出オチの作品です。
最初は某有名小説そのままのタイトルにして、ナイの一人称を『吾輩』にしようとしてましたが、さすがにそれはマズそうなので現在のタイトルになって、一人称も『我』の我っ娘に。
一応、10万字くらいを区切りにして書き進めていますので、よろしくお付き合いください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる