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第10章 思いがけない味方
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「ここは どこですか?」
わけのわからぬままに、ここへ連れて来られたけれど…
それでも珠紀は、まだここから脱出できないものだろうか、と
あきらめてはいなかった。
オバサンの手に、グッと力が入り
「ここは…あの人のお城の一部よ」
はぐらかすように言う。
男の目を気にしているのだろう。
これでは自由に、動き回ることなど、かなわないのではないだろうか…
珠紀は頭を痛める。
「あの人は…決して、悪い人じゃないのよ」
言い訳のようにオバサンは言う。
「ただ…今までが、あまりにも不運だったから」
なぜだろう。
肩を持つような、言い方をする。
(やはり、この人は…味方ではないのか?)
少なからず、落胆を隠せなかった。
だがオバサンは、励ますように
「大丈夫よ」と珠紀に声をかけると
「いい方法があるわ」と、自信あり気な顔で、珠紀を見つめた。
「いい方法?」
本当に、策はあるの?
思わず珠紀は、ピタリと足を止める。
薄暗がりに、ランプが点々と灯っていて、独特の空気を
かもしだしている。
廊下にそって、木の扉が整然と並んでいる。
ここはやはり…ホテルじゃないんだな、とふと珠紀は
気づいていた。
「あなた…まずは、あの人と仲良くなりなさい。
そうすればきっと…チャンスがやって来るわ」
じぃっと珠紀を見つめて、オバサンはそう言った。
(仲良くなる?そんなことして、本当に帰してもらえるのだろうか?)
珠紀は半信半疑だ。
てっきり、寝ている時を狙って、脱出するとか、
すきをついて、逃げ出すとか
荷物に紛れてとか、使用人に扮して、とか…
何か策があるかと思うけれど…
「坊ちゃんは、とにかく用心深いから、それがバレたら、
かなり厄介なことになるわ」
静かな顔で、オバサンは珠紀の顔をじぃっと見た。
わけのわからぬままに、ここへ連れて来られたけれど…
それでも珠紀は、まだここから脱出できないものだろうか、と
あきらめてはいなかった。
オバサンの手に、グッと力が入り
「ここは…あの人のお城の一部よ」
はぐらかすように言う。
男の目を気にしているのだろう。
これでは自由に、動き回ることなど、かなわないのではないだろうか…
珠紀は頭を痛める。
「あの人は…決して、悪い人じゃないのよ」
言い訳のようにオバサンは言う。
「ただ…今までが、あまりにも不運だったから」
なぜだろう。
肩を持つような、言い方をする。
(やはり、この人は…味方ではないのか?)
少なからず、落胆を隠せなかった。
だがオバサンは、励ますように
「大丈夫よ」と珠紀に声をかけると
「いい方法があるわ」と、自信あり気な顔で、珠紀を見つめた。
「いい方法?」
本当に、策はあるの?
思わず珠紀は、ピタリと足を止める。
薄暗がりに、ランプが点々と灯っていて、独特の空気を
かもしだしている。
廊下にそって、木の扉が整然と並んでいる。
ここはやはり…ホテルじゃないんだな、とふと珠紀は
気づいていた。
「あなた…まずは、あの人と仲良くなりなさい。
そうすればきっと…チャンスがやって来るわ」
じぃっと珠紀を見つめて、オバサンはそう言った。
(仲良くなる?そんなことして、本当に帰してもらえるのだろうか?)
珠紀は半信半疑だ。
てっきり、寝ている時を狙って、脱出するとか、
すきをついて、逃げ出すとか
荷物に紛れてとか、使用人に扮して、とか…
何か策があるかと思うけれど…
「坊ちゃんは、とにかく用心深いから、それがバレたら、
かなり厄介なことになるわ」
静かな顔で、オバサンは珠紀の顔をじぃっと見た。
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