136 / 286
第10章 思いがけない味方
3
しおりを挟む
男は黙って、こちらを見ている。
(あら?この人…オバサンが、苦手なのかしら?)
珠紀は思いがけず、この男の弱点を見つけたようで、クスリと笑った。
「あら、どうなさったんですか?」
そう言いつつも、オバサンはニヤニヤする。
元気そうですね、よかった、とあらためて珠紀の手をとると
「今日から私が、あなたのお世話をしますね」
男の方を見ると、その女性は宣言してみせた。
「あっ、あぁ」
その勢いに押されたのか、男は目を泳がせて、急にオドオドとしている。
(なんだ、この人、思ったよりも怖くないかも?)
珠紀は急にホッとして、こわばっていた顔を緩ませる。
山内さんと呼ばれるオバサンに、つかまるようにして、
珠紀は立ち上がる。
小柄な割に、思いがけず強い力で引っ張り上げるので、
驚いた顔をしていると…
「だって私、雑用とか、力仕事も散々してますからね」と力こぶを作って見せる。
男は何も言わぬまま、その様子をじっと見ている。
「この人のことは…私が責任を持って、お世話しますから」
そう言うと
「それは頼む」
ようやく彼女に向かって、声をかけた。
するとオバサンは澄ました顔で、
「こっちへ」と珠紀の背中に手を回すと、部屋のドアを開ける。
(うわぁ~何だか久しぶり)
思わず珠紀は、たまっていた息を吐いて、深呼吸をする。
肩に入っていた力が、すっと抜ける。
ほんの数時間前は、中庭を歩いていたというのに…
あまりにも、その落差が大きい。
何だかこれが現実なのか、信じられない気分だ。
「大丈夫よ」
オバサンが耳元で、珠紀にそっとささやく。
「ここはまだ…モニターに映っているから、黙って私について来て」
真面目な顔をしてそう言うと、珠紀の背に手を回したまま、
廊下を歩き始めた。
(あら?この人…オバサンが、苦手なのかしら?)
珠紀は思いがけず、この男の弱点を見つけたようで、クスリと笑った。
「あら、どうなさったんですか?」
そう言いつつも、オバサンはニヤニヤする。
元気そうですね、よかった、とあらためて珠紀の手をとると
「今日から私が、あなたのお世話をしますね」
男の方を見ると、その女性は宣言してみせた。
「あっ、あぁ」
その勢いに押されたのか、男は目を泳がせて、急にオドオドとしている。
(なんだ、この人、思ったよりも怖くないかも?)
珠紀は急にホッとして、こわばっていた顔を緩ませる。
山内さんと呼ばれるオバサンに、つかまるようにして、
珠紀は立ち上がる。
小柄な割に、思いがけず強い力で引っ張り上げるので、
驚いた顔をしていると…
「だって私、雑用とか、力仕事も散々してますからね」と力こぶを作って見せる。
男は何も言わぬまま、その様子をじっと見ている。
「この人のことは…私が責任を持って、お世話しますから」
そう言うと
「それは頼む」
ようやく彼女に向かって、声をかけた。
するとオバサンは澄ました顔で、
「こっちへ」と珠紀の背中に手を回すと、部屋のドアを開ける。
(うわぁ~何だか久しぶり)
思わず珠紀は、たまっていた息を吐いて、深呼吸をする。
肩に入っていた力が、すっと抜ける。
ほんの数時間前は、中庭を歩いていたというのに…
あまりにも、その落差が大きい。
何だかこれが現実なのか、信じられない気分だ。
「大丈夫よ」
オバサンが耳元で、珠紀にそっとささやく。
「ここはまだ…モニターに映っているから、黙って私について来て」
真面目な顔をしてそう言うと、珠紀の背に手を回したまま、
廊下を歩き始めた。
0
お気に入りに追加
9
あなたにおすすめの小説
怪演!ゴーストレストラン
日向コタ
ライト文芸
錦光太(にしきこうた)は公立高校に通う高校1年生。光太は高校での授業が退屈で、なかなか頭に入って来なかった。
ある日、光太はある出来事をきっかけにゴーストの零(れい)と出会う。
光太と零は、人間と幽霊という垣根を越えて、町のレンタルキッチン「クッチーナ」を借りて、レストラン運営にチャレンジしていく。
二人の"夢"を叶えるべく奔走する姿を描いた物語。
一よさく華 -渡り-
八幡トカゲ
ライト文芸
自分を狙った人斬りを小姓にするとか、実力主義が過ぎませんか?
人斬り 柚月一華(ゆづき いちげ)。
動乱の時代を生きぬいた彼が、消えることのない罪と傷を抱えながらも、新たな一歩を踏み出す。
すべてはこの国を、「弱い人が安心して暮らせる、いい国」にするために。
新たな役目は、お小姓様。
陸軍二十一番隊所属宰相付小姓隊士。宰相 雪原麟太郎(ゆきはら りんたろう)は、敵方の人斬りだった柚月を、自身の小姓に据えた。
「学びなさい。自分で判断し、決断し、行動するために」
道を失い、迷う柚月に雪原は力強く言う。
「道は切り開きなさい。自分自身の力で」
小姓としての初仕事は、新調した紋付きの立派な着物を着ての登城。
そこで柚月は、思わぬ人物と再会する。
一つよに咲く華となれ。
※「一よさく華 -幕開け- 」(同作者)のダイジェストを含みます。
長編の「幕開け」編、読むのめんどくせぇなぁって方は、ぜひこちらからお楽しみ下さい。
助けてください!エリート年下上司が、地味な私への溺愛を隠してくれません
和泉杏咲
恋愛
両片思いの2人。「年下上司なんてありえない!」 「できない年上部下なんてまっぴらだ」そんな2人は、どうやって結ばれる?
「年下上司なんてありえない!」
「こっちこそ、できない年上の部下なんてまっぴらだ」
思えば、私とあいつは初対面から相性最悪だった!
人材業界へと転職した高井綾香。
そこで彼女を待ち受けていたのは、エリート街道まっしぐらの上司、加藤涼介からの厳しい言葉の数々。
綾香は年下の涼介に対し、常に反発を繰り返していた。
ところが、ある時自分のミスを助けてくれた涼介が気になるように……?
「あの……私なんで、壁ドンされてるんですか?」
「ほら、やってみなよ、体で俺を誘惑するんだよね?」
「はあ!?誘惑!?」
「取引先を陥落させた技、僕にやってみなよ」
ダッシュの果て、君と歩める世界は
粟生深泥
ライト文芸
町に伝わる“呪い”により祖父と父を亡くした宮入翔太は、高校二年生の春、「タイムマシンは信じるか」と問いかけてきた転入生の神崎香子と知り合う。その日の放課後、翔太の祖母から町に伝わる呪いのことを聞いた香子は、父と祖父の為に呪いの原因を探る翔太に協力することを約束する。週末、翔太の幼なじみの時乃を交えた三人は、雨の日に登ると呪いにかかるという深安山に向かい、翔太と時乃の話を聞きながら山頂で香子は試料を採取する。
それから一週間後、部活に入りたいと言い出した香子とともにオーパーツ研究会を訪れた翔太は、タイムトラベルについて調べている筑後と出会う。タイムトラベルに懐疑的な翔太だったが、筑後と意気投合した香子に巻き込まれるようにオーパーツ研究会に入部する。ゴールデンウィークに入ると、オーパーツ研究会の三人はタイムトラベルの逸話の残る坂巻山にフィールドワークに向かう。翔太にタイムトラベルの証拠を見せるために奥へと進もうとする筑後だったが、鉄砲水が迫っていると香子から告げられたことから引き返す。その後、香子の言葉通り鉄砲水が山中を襲う。何故分かったか問われた香子は「未来のお告げ」と笑った。
六月、時乃が一人で深安山に試料を採りに向かう途中で雨が降り始める。呪いを危惧した翔太が向かうと、時乃は既に呪いが発症していた。その直後にやってきた香子により時乃の呪いの症状は治まった。しかしその二週間後、香子に呪いが発症する。病院に運ばれた香子は、翔太に対し自分が未来の翔太から頼まれて時乃を助けに来たことを告げる。呪いは深安山に伝わる風土病であり、元の世界では呪いにより昏睡状態に陥った時乃を救うため、翔太と香子はタイムトラベルの手法を研究していた。時乃を救った代償のように呪いを発症した香子を救う手立てはなく、翌朝、昏睡状態になった香子を救うため、翔太は呪いとタイムトラベルの研究を進めることを誓う。
香子が昏睡状態に陥ってから二十年後、時乃や筑後とともに研究を進めてきた翔太は、時乃が深安山に試料を採りに行った日から未来を変えるためにタイムトラベルに挑む。タイムトラベルに成功した翔太だったが、到達したのは香子が倒れた日の夜だった。タイムリミットが迫る中、翔太は学校に向かい、筑後に協力してもらいながら特効薬を作り出す。間一髪、特効薬を香子に投与し、翌朝、香子は目を覚ます。お互いの為に自分の世界を越えてきた二人は、なんてことの無い明日を約束する。
我っ娘はネコである!! ~ダンジョンコアの力で老猫(14歳)が少女(14歳)に生まれ変わったら~
東堂大稀(旧:To-do)
ファンタジー
「我はネコである!名前はナイ!」
突然現れ、そう宣言したのは黒髪金目の全裸の少女だった。
14歳の老猫のナイは、主人の賢者ブリアックの死を切っ掛けに自由な野良猫になった。
ちょっとした好奇心からナイは引率付きの初心者冒険者のパーティーの後を追いかけ、ダンジョンへと入ってしまう。
そこでナイと冒険者パーティーは『彷徨える落とし穴』と呼ばれる強制転移ポイントに落とされ、ダンジョン最下層に送り込まれてしまうのだった。
危機的状況に陥る冒険者パーティー。
そこに現れたのは、ダンジョンコアの力で14歳の少女となった元猫のナイだった!
※ ※ ※
猫の14歳は老猫ですが、人間の14歳は少女だよなという発想からの作品です。
14歳の少女ナイは、老猫だったため上から目線で猫らしく自分勝手な性格をしています。
そして、それに振り回されるのが、お人好しで有名な29歳の中堅冒険者のアルベルトです。
ハッキリ言って、タイトル出オチの作品です。
最初は某有名小説そのままのタイトルにして、ナイの一人称を『吾輩』にしようとしてましたが、さすがにそれはマズそうなので現在のタイトルになって、一人称も『我』の我っ娘に。
一応、10万字くらいを区切りにして書き進めていますので、よろしくお付き合いください。
わたしの婚約者は学園の王子さま!
久里
児童書・童話
平凡な女子中学生、野崎莉子にはみんなに隠している秘密がある。実は、学園中の女子が憧れる王子、漣奏多の婚約者なのだ!こんなことを奏多の親衛隊に知られたら、平和な学校生活は望めない!周りを気にしてこの関係をひた隠しにする莉子VSそんな彼女の態度に不満そうな奏多によるドキドキ学園ラブコメ。
トイレの聖女様! ~我々が必要としているのは聖女であって便所ではない! と追放された召喚聖女、砂漠の獣と奇跡を起こす!~
神通力
ファンタジー
「会社にも行きたくないが、ウォシュレットもエアコンもシャワーもない異世界になんかもっと行きたくない!」と駄々を捏ねた結果、『エアコン完備のユニットバス使い放題』なるチートを押し付けられ「滅びかけの国を救え」と異世界に放り込まれたアラサー召喚聖女、御手洗清美(みたらいきよみ)は些細な誤解から褐色イケメン王子軍団と盛大に喧嘩別れしてしまい、成り行きで砂漠に住まう虎獣人の部族に厄介になる事に。彼女を命の恩人と慕う武人、彼女に利用価値を見出す族長、彼女の存在が面白くない族長の息子など、虎・虎・虎! な美女と野獣の織り成す異世界聖女ライフをお楽しみください!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる