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第8章 秘密の隠し部屋
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「あのぉ~私には、待っている人たちが、いるんです」
こちらを見下ろす男に、勇気を振り絞って、珠紀は言う。
男は冷ややかな目で見ている。
戸惑いつつも、ここでひき下がるわけにはいかない。
「きっとみんなも、心配していると思うんです」
もちろん、通るわけがない…と気づいていた。
それでもやはり、黙っているわけにはいかなかったのだ。
男はじぃっと珠紀を見下ろすと、
「わかってるよ、そんなこと」
ブスリとして言う。
「このままだと、大騒ぎになります。
きっと、誘拐された、と言われるでしょう。
もしかしたら、警察も来るかも」
実際は携帯は圏外だというのに、どうやって通報するのだ、とは思うけれど…
ホテルからなら、もしかしたら通じるかもしれない、と思う。
初めは無反応だった彼も、『警察』の二文字に、目を鋭くさせて、
「それは…困るなぁ」
口元をこわばらせた。
マスク越しではあるけれど、かなり険しい顔をしているのは、
あらわになっていなくても、見て取れた。
「必ず…この部屋に戻ってきます。
だから…一旦、みんなの所へ、帰らせてください」
思い切って、そう訴えた。
すると男は、珠紀にグッと近寄り
「そう言って…逃げるつもりなんだろう!」
激しい語気で、彼女の肩をグッとつかんだ。
「そんなことはないです!」
彼のまるで飛び掛からんばかりの勢いに、珠紀は恐れをなして。
あわてて言葉を引っ込めた。
(やっぱり、ダメかぁ~)
彼女の胸の奥で、苦い敗北感を感じていた。
そして彼女は思う。
とにかく彼に信用されないことには、監禁だけでは済まないことだろう…
(ここはおとなしく、引き下がろう)
そう自分に言い聞かせて、珠紀はあふれ出しそうな涙を、ぐっとこらえた。
こちらを見下ろす男に、勇気を振り絞って、珠紀は言う。
男は冷ややかな目で見ている。
戸惑いつつも、ここでひき下がるわけにはいかない。
「きっとみんなも、心配していると思うんです」
もちろん、通るわけがない…と気づいていた。
それでもやはり、黙っているわけにはいかなかったのだ。
男はじぃっと珠紀を見下ろすと、
「わかってるよ、そんなこと」
ブスリとして言う。
「このままだと、大騒ぎになります。
きっと、誘拐された、と言われるでしょう。
もしかしたら、警察も来るかも」
実際は携帯は圏外だというのに、どうやって通報するのだ、とは思うけれど…
ホテルからなら、もしかしたら通じるかもしれない、と思う。
初めは無反応だった彼も、『警察』の二文字に、目を鋭くさせて、
「それは…困るなぁ」
口元をこわばらせた。
マスク越しではあるけれど、かなり険しい顔をしているのは、
あらわになっていなくても、見て取れた。
「必ず…この部屋に戻ってきます。
だから…一旦、みんなの所へ、帰らせてください」
思い切って、そう訴えた。
すると男は、珠紀にグッと近寄り
「そう言って…逃げるつもりなんだろう!」
激しい語気で、彼女の肩をグッとつかんだ。
「そんなことはないです!」
彼のまるで飛び掛からんばかりの勢いに、珠紀は恐れをなして。
あわてて言葉を引っ込めた。
(やっぱり、ダメかぁ~)
彼女の胸の奥で、苦い敗北感を感じていた。
そして彼女は思う。
とにかく彼に信用されないことには、監禁だけでは済まないことだろう…
(ここはおとなしく、引き下がろう)
そう自分に言い聞かせて、珠紀はあふれ出しそうな涙を、ぐっとこらえた。
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