ラストダンスはあなたと…

daisysacky

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第6章  禁断の花園

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「まずは、行きながら話そうか」
 これ以上遅くなったらいけない…と、先輩は1同をうながした。
「本当は、ホテル内の探索をしたいけど、それは明日にしようか」
そう言うので…あまり遅くはならないのかな、と珠紀はホッとした。
「えーっ、そうなんですかぁ?」
玲は思いっきり、甘えた声で拗ねて見せるけれど、先輩たちに軽くスルー
されたので、ちょっとムッとした顔になった。

「御覧の通り、案内図がないだろ?
 たぶんね、フロントで聞いても、教えてくれそうにないんだ」
じゃあ、どうするの、と玄関に向かう途中、チラリとフロントの方を
振りかえった。
 昼間と違い、2人しか姿が見えない。
さらに何事か、電話で話し込んでいるようだ。
「そうなんですかぁ?」
珠紀もつられて、振り向きざま、チラリと見る。
すると電話をしている方の1人と、一瞬目が合ったような気がした。


 めいめい懐中電灯を手に、例の回転扉をくぐり抜ける。
「ねぇ~ここ、夜中に鍵がかかったりしませんよね?」
一瞬不安になり、珠紀が声をもらすと
「大丈夫だろ?」
いかにも軽い調子で、秀人先輩が言う。
 変なことになってしまった。
 大丈夫かなぁ?
だがうまく回転扉をくぐり抜け、外に無事躍り出ると、思わず後ろを
振り返る。
もちろん特別に、何かが見えるわけではないけれど、こうしてあらためて
見ると…やけに古めかしくて、年代を感じさせる建物に見えた。

「さ、さっさと行こうぜ!」
 ポン、と珠紀の肩をたたくと、先輩はスタスタ歩く。
こんなところで、置いてきぼりになったら大変、と珠紀はあわてて
その後ろを追いかける。
 
 このホテルは、少し小高い山の上にあり、周りにはこれといって、
何もない。
もしも迷ってしまったら、何を目印にしたらいいのだろう?
何だか不安になって来る。
そんな珠紀とは裏腹に、隣にいる玲は、何だか楽しそうに、
スキップをするように、足元軽く歩いていた。

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