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第5章  謎の肖像画

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「いや…1階だけだったし」
 いきなり聞かれて、うまい言い訳を思いつかず、少しバツの悪い
思いがする。
そんな珠紀の表情を読むと
「まさか、あのエレベーターが、怖いの?」
じぃっと珠紀を見つめると、その女性が聞く。
「あ、そうかも…」
とりあえず話を合わせる。

 やはり階段は、目立たないところにあった。
柱の陰に、ひっそりと隠れるようにして、ポッカリと口を開いていた。
おそらくこれを利用する客は、いないのだろう…
なんとなく珠紀はそう思う。
むしろ利用されたくないのでは?
すると女の人は、珠紀の顔から眼を離さず、
「まぁね、時折そんなお客さんもいますよ」
ニヤリと笑ってみせる。
「ここ…古いでしょ?
 だから…どんなトコなのか、見てみたいんでしょうねぇ」
さぐるようにして、ハッキリとした口調で言うので、珠紀は一瞬
ドキリとする。
もしかして…自分たちも、そんな客だと、気づかれているかもしれない…と。
まるですべて、見透かされているような、とても落ち着かない気持ちになる。

 少し薄暗い階段ホールで、珠紀と玲と掃除のオバサンと…
3人で顔を見合わせていると、
「あら、やだ!」
急にオバサンが、けたたましく笑いだす。
「私、あなたたちのこと、別に疑っているわけじゃあないのよ」
 オバサンは、どうやらとてもおしゃべりで、人懐っこいタイプのようだ。
たまたま見かけた珠紀たちのことを、放っておけなかったのだろう。
「で、何を探しているの?」
ようやく切り出してきたので、先ほどまでの後ろめたい気持ちを
かかえていた珠紀は、正直ホッとした。
「あのぉ、お風呂なんですけど」
ようやく話を切り出すと、
「そうそう、その話だったわね」
やっと思い出したのか、少し真面目な顔になる。
「お風呂はね、5階にあるわよ」
ごくあっさりと、知りたかった情報を得られると、もうフロントに行く
必要がなくなった。
(そういえば、このホテル、何階建てだっけ?)
急に気になってきた。
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