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第5章 謎の肖像画
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「なんかもう、お腹がいっぱい!」
満足そうに、ナプキンで口のほとりをぬぐうと、目の前に座るアヤカが、
誰にともなく話しかけた。
「ヤバイ、食べ過ぎた!」
「太っちゃう!」
先輩たちも、口をきわめてそう言う。
その割にはしっかりと、嘗めたように皿のソースを少しも残さず、
〆のコーヒーまで、しっかりと楽しんでいる。
さて、部屋に帰ろうか、と腰を上げると
「ねぇ、君たち…これからちょっと、腹ごなしに歩かないか」と、
秀人先輩が声をかけてきた。
お風呂にでも入って、のんびりと汗でも流そうか…と思っていた珠紀は、
少し戸惑い、玲を振り返る。
「ねぇ~どうする?」
親友の顔を見る。
「うーん、そうだなぁ」
そう言いつつも、かなり心がひかれるようで、興味津々の顔をしている。
「私は、パス!」
早々に、カオリ先輩がさっさと部屋のキーを持って、ドアの方に進む。
(あら、珍しい…)
てっきりコバンザメのように、秀人先輩にベッタリと張り付いているだろう、と
思っていたのに、どうもそうではないらしい。
「お風呂、何階にあるの?」
クルリと振り返り、秀人先輩に声をかける。
「えーと、何階だっけ?」
彼は部屋の備え付けのシャワーを浴びたらしく、まだ探してはいないようだ。
(やっぱり、珍しい…)
もしかして、2人きりになれないから、カオリ先輩は拗ねているのかしら、
とふと珠紀はそう思う。
(2人きりのデートの時にでも、来ればいいじゃないの)
ちょっと大人げないなぁと、珠紀はカオリ先輩のことを見ていた。
「4階じゃないの?確か部屋に書いてあったと思う」
「あ、フロントで聞く?」
「うーん、メンドイ」
「どっかに書いてあるんじゃあないの?」
メガネをかけた先輩が、めんどくさそうに彼女に言った。
満足そうに、ナプキンで口のほとりをぬぐうと、目の前に座るアヤカが、
誰にともなく話しかけた。
「ヤバイ、食べ過ぎた!」
「太っちゃう!」
先輩たちも、口をきわめてそう言う。
その割にはしっかりと、嘗めたように皿のソースを少しも残さず、
〆のコーヒーまで、しっかりと楽しんでいる。
さて、部屋に帰ろうか、と腰を上げると
「ねぇ、君たち…これからちょっと、腹ごなしに歩かないか」と、
秀人先輩が声をかけてきた。
お風呂にでも入って、のんびりと汗でも流そうか…と思っていた珠紀は、
少し戸惑い、玲を振り返る。
「ねぇ~どうする?」
親友の顔を見る。
「うーん、そうだなぁ」
そう言いつつも、かなり心がひかれるようで、興味津々の顔をしている。
「私は、パス!」
早々に、カオリ先輩がさっさと部屋のキーを持って、ドアの方に進む。
(あら、珍しい…)
てっきりコバンザメのように、秀人先輩にベッタリと張り付いているだろう、と
思っていたのに、どうもそうではないらしい。
「お風呂、何階にあるの?」
クルリと振り返り、秀人先輩に声をかける。
「えーと、何階だっけ?」
彼は部屋の備え付けのシャワーを浴びたらしく、まだ探してはいないようだ。
(やっぱり、珍しい…)
もしかして、2人きりになれないから、カオリ先輩は拗ねているのかしら、
とふと珠紀はそう思う。
(2人きりのデートの時にでも、来ればいいじゃないの)
ちょっと大人げないなぁと、珠紀はカオリ先輩のことを見ていた。
「4階じゃないの?確か部屋に書いてあったと思う」
「あ、フロントで聞く?」
「うーん、メンドイ」
「どっかに書いてあるんじゃあないの?」
メガネをかけた先輩が、めんどくさそうに彼女に言った。
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