ラストダンスはあなたと…

第5章 謎の肖像画

７

　　だが玲は例の肖像画のことは、気が付いていない様子。
珠紀とコトミが、まだその絵の前で、じぃっと観察していると…
玲は軽くにらむようにして、珠紀の後ろに隠れるようにして
立っているコトミのことを見つめた。

　重たい扉があけ放され、中からは先輩たちのどよめく声が
聞えて来る。
「え、すごい！」
「なんか、お城の晩餐会みたい」
ひときわ女の先輩たちの、華やぐ声がここまで聞こえて来る。
「さぁ、行きましょ」
玲は珠紀をうながす。
珠紀はコトミを振り返る。
相変わらず青ざめた顔で、コトミは珠紀に向かって黙ってうなづいた。

　その不気味な絵は、一瞬まばたきをしたように見えた。
（やっぱり…生きてる！）
瞬間的に、そう思ったけれど…玲に言ったら、きっとバカにされそうで、
珠紀はあわてて、言葉を飲み込む。

　入り口にはそっけなく、『ダイニング2』と書かれた札が、
ひっそりと立てかけられている。
（あら、ダイニング２ということは…ダイニング１は、どこにあるの？）
珠紀は不思議そうに、見つめる。
この階には、大きな部屋は他にはなさそうなのだけれど…
「いいから、早く！
　先輩たちを待たせているんだから」
じれたように、玲がやや強引に、珠紀の背中をぐぃっと押す。
「あ、はいはい、わかってるってばぁ」
それにしても、あの細い体のどこに、あんな力があるの…
と、思うほどに、思いがけない力強さで、珠紀は中へ
引きずり込まれる。

　中は天井もかなり高く、思いがけないくらいの広さの部屋だ。
ここでダンスでも出来るのでは、というくらいの広さで…
床もツヤツヤに磨かれている。
（体育館の広さぐらいあるかも）
感心したように、珠紀はそう思った。