ラストダンスはあなたと…

第5章 謎の肖像画

３

　　客室に向かう時にも思ったけれど、このホテルは、かなり昔に
建てられたのだろうか。
かなりレトロな造りになっていた。
このエレベーターもそうで、映画で見るような、鉄の格子状の柵のようなものが
ついていて、スケルトンになっている。
その柵を手で開くのだ。
そしてボタンを押すと、ぐぃっとレバーを引く。
すると鎖が動く仕組みだ。

「ねぇ～このエレベーター、大丈夫ぅ？」
　ケラケラ笑いながら、他の先輩たちが声を上げて笑う。
「大丈夫だろ？
　でも…かなりゆっくりだなぁ」
これならば、階段に回った方が、早かったのではないか、と思うけれども…
それでも何となく、気が進まないのだ。
　階段は、柱の陰に隠れていたし、薄暗い雰囲気だ。
それにやたらとこのホテルは…入り組んでいて、分かりにくいのだ。
突き当りの壁か、と思うと、鏡があったり、
柱と思うと、通路があったり、
この調子で行くと、隠し扉や、隠し部屋や、忍者屋敷のように、
仕掛けがあるのでは、と思わせる。
（カラクリ屋敷か？）
などと珠紀は思うのだった。
だがその不思議な構造に関しても、気づいたものは他にはいない様子だ。
なんで…と思うけれど、みんなこの新しい環境に夢中なのかもしれない。

　カクンカクン
　ガタンガタン
鎖がかすかに、きぃきぃときしむ音をたてて、エレベーターの箱が
動き始める。
先輩が言わなくても、やはり他の者たちも、大丈夫か、と不安に
思っていたようで、1同は急に黙り込む、落ち着かない様子で、
天井や柵を見つめていた。
柵が何かの拍子で、開かないか？
鎖がいきなり、切れたりはしないのか、とヒヤヒヤしどおしで、
手に汗をぐしょぐしょになるくらい、かいている珠紀だった。