ラストダンスはあなたと…

第5章 謎の肖像画

２

　　こんな風に、のん気に…このホテルの中を散策するのは、実はあまり
よくないのではないか…と、ひどく居心地の悪さを感じている。
珠紀は辺りを見回し、他にも誰か気付いている人はいないか、と振り向く。
玲は相変わらず、好奇心むきだしで、キョロキョロ目を光らせているし、
カオリ先輩は、はなから秀人先輩のことしか、見えていないみたいだし…
男の先輩たちは、すきさえあれば、どこにでものぞきに行ってやろう、と
身構えているし…
みんな、何かがおかしい、ということに、気づいてはいないのか、と
少しガッカリしていた。

　するとようやく1人、同じようにみている人と、目が合った。
アヤカの友達のコトミだ。
遠慮がちに、アヤカの後ろを歩いているけれど、やはり落ち着かない様子。
どうも顔色がすぐれないようだ。
　何とか話しかけてみたい！
珠紀はじれったく思うけれども。
玲やアヤカの目を盗んで、話しかけるのは、かなり難しそうだ。
それでも何とか、話しかけたい…
落着きなく、そのチャンスをねらって、目をキョロキョロさせていると、
「あれ、珠紀！どうしたの？」
めざとく玲が、こちらの様子に気が付いた。
「別に」
あわてて目をそらしたけれど…
コトミの視線が、的確にこちらを捕らえているのに気が付いた。
（きっとあの子も、気づいているんだ）
珠紀は確信した。
だからといって、どうこうするわけにもいかない。
なぜなら珠紀には玲が。
コトミの側には、いつもアヤカが、べったりとくっついている。
（何もなければいいんだけどなぁ）
珠紀はひたすらそう願っていた。

「うわぁ～このエレベーター、何かフンイキがあるぅ～」
その時、カオリ先輩の声が聞えてきた。