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第4章  湖のほとりで

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「おや?そんなことを言ってると…
 魔物が夜中に、襲ってくるかもよぉ」
 脅かすように、わざと声をひそめると、先輩はチラリと彼女の顔を
見つめた。
「えっ、やめてよぉ~脅かさないでよぉ」
 カオリ先輩の高いソプラノボイスが、やけにシンとした湖畔の隅々にまで
響き渡る。
「ま、あくまでも、噂なんだけどね」
軽い調子で言う秀人先輩だけれども…
どうやらまんざら冗談ばかりでは、なさそうだ…

 視線を感じて振り返ると、男の先輩たちが、こちらの方を見て、
黙って真面目な顔で、うなづいている。
(なによ、それ?
 魔物?今の時代に?
 いるわけないじゃない)
さすがに丸のまま、信じるわけにはいかないけれど…
 それでも先ほどから、木の茂み、草の陰、
風の揺らぎの中に、何か神秘なものがいるような空気が漂っていて…
さらに不思議な雰囲気を作っている。
 このホテルに来てから感じた違和感も…どうしても拭い去ることが
出来ないのだ。
とても神妙な面持ちで、隣にいる玲を振り返る。
玲はポカーンとした面持ちで、ただ「へぇ~」とつぶやくのみだった。

「さ、そろそろ帰ろうか。
 暗くなるといけない」
どうやら本当に、夕食までの間の暇つぶしに、ここまで来たようだ。
だけど先輩たちの様子では、これだけで済むわけがない…
と、何となく肌で、珠紀は感じ取っていた。
 いつの間にか辺りが薄闇に包まれて、足元が見えづらくなってきた。
そうなるとさすがに、その独特の雰囲気に、圧倒されそうになる。
 ホタルだろうか?
ポツンポツンと、淡い小さな光が、チラチラと点滅を繰り返すのが見える。
こことホテルは、つながっていないのだろうか、と一瞬珠紀は
そう思った。
「さ、行こう」
促されるままに、ゾロゾロと目の前にそびえるホテルに向かって、歩いて行く。
「足元に気をつけろよ」
後ろから、秀人先輩の声が響く。
言葉少なめに、みんなは急いで道を探す。
月の薄明かりを頼りに、草に足を取られないようにして、
慎重に歩きながら…
ここには他にも、何かが隠されているような、そんな予感を
感じていた。

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