ラストダンスはあなたと…

daisysacky

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第4章  湖のほとりで

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  ロビーにやって来ると、案の定珠紀たちが、1番最後だった。
 ほらっ!
 珠紀が玲を突っつくと、玲はまったく悪びれる様子もなく、澄ました顔で
仲間たちの方に向かって
「すみませーん」と言うと、スルリと珠紀よりも早く、仲間たちの方へと
駆け出した。
だけどもみんな、珠紀たちが遅れたことを、気にする様子もなく、
何だか和気あいあいと、楽しそうに話しをしている。
先輩たちも同様で、とてもリラックスした顔で、何やら話し込んでいる。

「いやぁ~すごいね」
「ねぇ、晩御飯、どんなのかなぁ」
言葉の端々に、ワクワクとした、はずんだ空気が漂っている。
 秀人先輩は、シャワーでも浴びてきたのか、サッパリとした顔をして、
小ざっぱりとした服に着替えてきている。
さらには、何だかすずやかなコロンの香りが、かすかに香って来る。
(やっぱり先輩は…オシャレだなぁ)
思わずウットリとする珠紀だ。
「ねぇ先輩!夕食まで、どうするんですか?」
 早速珠紀と同じ時期に入ってきた新入生のアヤカが、はつらつとした声で
先輩に聞く。
彼女は、珠紀たちとは別の短大の子だ。
なので、どんな子なのか、今一つわからないのだけれど…
どうやら玲と同じように、積極的なタイプのようだ。
その傍らには、ちょっとおとなし目のコトミという女の子がいる。
なんとなくその子に注目していると、どうやら玲も、アヤカが
気になるらしい。

「どうするってねぇ~この辺りをブラブラ散策でも、するんじゃない?」
 ちょっと意識を始めたようだ。
するとその空気に気付いたのか、秀人先輩はニヤニヤしながら、
「まぁ、そうなるよねぇ」
軽い調子で言う。
「そうそう!ここね、部屋だけでなくて、個室のお風呂、借りられる
みたいだよ」と楽しそうに言う。
「あら、それ、いいわねぇ」
早速カオリ先輩が食いつく。
「ね、秀人も入る?」
甘えるように、媚を含んだ目で彼女が言うと、
「やだぁ」
他の先輩が、黄色い声をあげて、突っつきあってケラケラ笑った。
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