ラストダンスはあなたと…

daisysacky

文字の大きさ
上 下
27 / 286
第2章  伝説のホテル

   16

しおりを挟む
「眺めがね、とってもいいらしいわよ!
 夜はねぇ、星がとってもきれいなんですってよ」
 やや興奮気味に、カオリ先輩がそう言うと、それにかぶせるように
「でも…夜はあまり、出歩かない方がいいな」と言うと、
すぐさま秀人先輩が、カオリ先輩がからみついてきた腕を、さり気なく
払いのける。
やけにハッキリとした口調で、意味ありげに目くばせをした。
なにかあるのだろうか?
「えっ、どうして?」
玲が大きな声で聞くと、じぃっとその瞳を暗く光る眼で見つめ返し
「あのホテルの回りには…大きな湖があるんだ」
一見、なんの関係もないようなことを言う。

 それだけなんだろうか、と珠紀は疑う。
確か、何か出る…と先輩たちは、言ってなかっただろうか?
急に顔をしかめて、珠紀は考え込むと…
「何を考えているの?」
玲が顔をのぞき込んできた。
「別に」
そっけなくそう言い返すけれども…そもそもネットで話題って、
もしかして…となんとなく嫌な思いがする。
自分も検索すればよかったのだけれど、正確な位置や、
名前を聞いていなかったので、調べることもかなわなかった。

「大丈夫!心配いらないわよ!
 この辺り、結構素敵な場所だから、
 明日また、みんなで散策するのもいいかもねぇ」
カオリ先輩が、ほがらかな声で、珠紀たちに声をかける。
その顔を、秀人先輩が微笑みながら見ている…
「なんかあてられちゃったなぁ」
ヘラリと玲が笑うと
「そうよね!」
珠紀と目を合わせる。
 そうでなくても、もうここまで来たら、今さら引き返すことも
出来ない。

 もしかして、幽霊ホテル?
一瞬珠紀の頭に、この言葉がかすめる。
急に不安になり、珠紀は前方を見つめた。
山の上に、チラリと洋風のお城のような建物が、目に入った。
「さぁ、あそこが、そのホテルよ!」
カオリ先輩の声が、自慢するように響いた。

しおりを挟む

処理中です...