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第1章 大学生デビュー
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「まぁなぁ、それはそうだけどさぁ~」
なんだか奥歯にものがはさまったような…あまり気乗りのしない返事だ。
秀人はムキになり、
「それはただの噂だろ?
大丈夫だって!」
何とか説得しよう…と、秀人はさらに賢人の顔をのぞき込む。
昔からそうだ。
何かどうしても欲しいと思ったら、手に入れるまでてこでも動かないのだ。
(また、始まった)
うんざりするように、賢人は目をそらす。
だけどあえて、口にはしない。
なぜならば、秀人にはいくら言ったところで、通用しないからだ。
「大丈夫だって!
危ない所に近付かなければ、いいんだろ?」
「うーん、まぁそうだけどさぁ」
幼なじみの賢人には、もはや打つ手がない、とあきらめてきている…
「肝試しとか、女子は大好きだろ?
そうだ、吊り橋効果、ってやつもあるしさぁ」
何とか賢人をその気にさせよう、とひるむことなく、さらに言いつのる。
「あら、まだやってるの?」
その時、声がした。
秀人の彼女のカオリだ。
スラリと形よく伸びた足を、ミニスカートからのぞかせて、
形よく整った膝小僧をわざと見せびらかすように、ゆっくりと
近付いて来る。
だが逆に秀人は、一瞬チェッと舌打ちをすると…
「いいか、わかったな」と、すばやく賢人の耳元にささやいた。
「いや、もう帰るところだよ」
先ほどとは打って変わって、さわやかな笑顔を素早く貼り付ける。
「いつにするか、もめてたトコだよ」
ニコニコとそう言うと、
「あっ、そうなの?」
カオリはするりと秀人の傍らに近付くと、上目遣いで彼を見つめる。
「あの噂のとこでしょ?
化け物が出たら、どうしよう?」
むき出しの腕をさすると、怖がるフリをして、秀人の腕にすぃっと
自分の手を、からませる。
「じゃあ、また!」
満足気に、片手でカオリの肩を抱き、片手を軽く上げると
そそくさとその場に背を向ける。
その姿を見送りながら、
あいつには、困ったもんだ…と、賢人は心の中でつぶやいていた。
なんだか奥歯にものがはさまったような…あまり気乗りのしない返事だ。
秀人はムキになり、
「それはただの噂だろ?
大丈夫だって!」
何とか説得しよう…と、秀人はさらに賢人の顔をのぞき込む。
昔からそうだ。
何かどうしても欲しいと思ったら、手に入れるまでてこでも動かないのだ。
(また、始まった)
うんざりするように、賢人は目をそらす。
だけどあえて、口にはしない。
なぜならば、秀人にはいくら言ったところで、通用しないからだ。
「大丈夫だって!
危ない所に近付かなければ、いいんだろ?」
「うーん、まぁそうだけどさぁ」
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そうだ、吊り橋効果、ってやつもあるしさぁ」
何とか賢人をその気にさせよう、とひるむことなく、さらに言いつのる。
「あら、まだやってるの?」
その時、声がした。
秀人の彼女のカオリだ。
スラリと形よく伸びた足を、ミニスカートからのぞかせて、
形よく整った膝小僧をわざと見せびらかすように、ゆっくりと
近付いて来る。
だが逆に秀人は、一瞬チェッと舌打ちをすると…
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「いつにするか、もめてたトコだよ」
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むき出しの腕をさすると、怖がるフリをして、秀人の腕にすぃっと
自分の手を、からませる。
「じゃあ、また!」
満足気に、片手でカオリの肩を抱き、片手を軽く上げると
そそくさとその場に背を向ける。
その姿を見送りながら、
あいつには、困ったもんだ…と、賢人は心の中でつぶやいていた。
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