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第1章  大学生デビュー

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  母さんが早くに亡くなり、父と2人暮らしだった珠紀は、
こんな風に浮ついていても、いいのだろうか…と、
いささか罪悪感を感じる。
(父さんは…今頃、どうしているのだろうか?)
 遠く離れた父のことを、思う…
急に黙り込む珠紀に気付いたのか、受話器の向こうでは明るい声で
「珠紀ってさぁ~ファザコンもいいけど、そろそろ卒業したら?」
さり気なく言うので、それってダメなの、と思う。
「一生、卒業なんて、しません!」
ちょっとムッとした口調で、語気を強めて、珠紀は答えた。


「ね、あの子、どう?」
「あの子って?」
 クラブハウスに入って来る女の子を眺めながら、男子生徒たちが
一斉に色めきだつ。
「今年は中々、豊作だなぁ」
ひそかに品定めする御仁も現れる。
毎年人気のサークルには、他大学からも、入会希望の女の子が
それなりに殺到するのだ。
青田刈りならぬ、早めにキープしようとするのは、
毎年恒例の行事だ。
それにしても…みんな本気で、テニスがしたくて、入って来るのだろうか?
秀人はなぜか、冷めた目で、女の子たちをながめた。

 正直自分はモテル、と自覚している。
自分から行かなくても、同級生に限らず、後輩や、卒業生に至るまで、
一方的に、言い寄られたり、lineのIDを渡されたりするのだ。
(おまえ、ずるいぞ、と思われているだろうけれど…)
黙ったままで、遠巻きに女の子たちを見ている秀人に、
ヘラヘラ笑いながら、悪友の賢人が、秀人に近付いて来た。
「ホント、シュートさまさまだな!」
おどけてペコリと頭を下げる。
「お前のおかげで、いつも入れ食い状態だもんな!」
 もっとも秀人には、彼女がいる。
一応公認の仲、ということになっているのだが、
秀人としては、カオリはガールフレンドの1人と、認識している。
「お前さ、その辺、どうなってるの?」
責めるようにして、この友人はさぐりを入れる。
「さぁ、どうだかなぁ」
わざと秀人ははぐらかした。
敵を欺くには、味方から、ということだし…
秀人はニヤリと笑った。
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