御手洗さんの言うことには…

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ソータローのこと…７５

「へぇ～そうなんだ」
　植物状態ではないとはいえ…
すっかり自分は、老人の生命力のことは、あてにしてはいなかった…
そう気が付く。
「君たちには、本当に悪いことをした…」
今度はハッキリと、そう聞こえる。
「えっ？」
まさか、こんな奇跡みたいなことが、本当に起きるなんて！
宗太郎は、まだ信じられないでいる。
見ると、老人はポッカリと目を開いて、宗太郎たちの方を見ている。
「あっ…」
　てっきりじいちゃんは、もう目覚めない…と、神林君は思い込んでいた。
だが老人は、まだ何か言いた気に、こちらを向いている。

「どうしたんですか？」
　おもむろに宗太郎は、老人に近付いて行く。
「あんたは…あの部屋を見たか？」
かすれた声で、老人は宗太郎に向かって、話しかける。
気のせいではない。
どうやら老人は、なけなしの力を振り絞って、何かを伝えようとしているのだ。
「あの部屋って？」
　どの部屋のことだ？
宗太郎は、老人に顔を近づける。
かすかにすえた臭いがして、老人の命の残り火は、あとわずか…
そう感じさせていた。
枯れ枝のように、骨ばった手が伸びてきたので、宗太郎は一瞬、
ひるんだ顔をする。
「キミ…あの時の子供か？」
シワに埋もれたまぶたから、思いがけず強い瞳が、宗太郎を射抜いているのに
気が付いた。